ナシ(納西)文字(読み)ナシもじ

改訂新版 世界大百科事典 「ナシ(納西)文字」の意味・わかりやすい解説

ナシ(納西)文字 (ナシもじ)

ナシ族によって古くから使われていた文字で,モソ文字とも呼ばれる。表意・象形文字(トンパ文字)と表音文字(コバ(哥巴)文字)の2種類がある。ともに主として巫師(一種のシャーマントンパと呼ばれる)が使い,一般の人々には読めない。トンパ文字の字形はきわめて象形的な性格を保持していて,甲骨文字(甲骨文)などとよく似ている。世界の文字の中で,いわば〈生きた化石〉文字として貴重な存在である。すべて手書きで,紙面を仕切った枠の中に書き込むが,言葉の順序どおりには並べないという特徴がある。読み方は巫師が代々口誦で伝えたもので,種々の助詞を補って読む。現存する資科では《洪水物語》などが有名であり,最近,舞踏様式を記録したものも発見されている。四川省で使われるアルス文字もナシ象形文字に近い。一方,コバ文字は1字形が1音節を書き表す音節文字である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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