ナチス文学(読み)ナチスぶんがく(英語表記)Nazis-Dichtung

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナチス文学」の意味・わかりやすい解説

ナチス文学
ナチスぶんがく
Nazis-Dichtung

1933年1月のヒトラー政権成立以後しばらくの間,文化政策は鳴りをひそめていたが,3月の国会議事堂炎上が共産主義者の放火によるとされてから,大がかりな左派文化人の追及が行われ,多くの文学者,芸術家の亡命が始った。9月,宣伝省のもとに文化院が設置され,著作,演劇,新聞,ラジオ,音楽,映画の統制が試みられた。文学の部門にも「国家社会主義」を青少年に普及すべく,これまでナチス的世界観を示していると評価されていた作家作品に賞が与えられ,財政的援助がなされた。その第1は,ドイツの祖国愛を描いた戦争文学で,ドウィンガー,ウェーナー,ハンス・ヨーストらの作品であり,これに反しレマルクや L.レンらの反戦文学は退けられた。第2はドイツ民族の生活圏 Lebensraumを扱ったもので,ハンス・グリムの『土地なき民』は特に推奨された。第3は都会文学を排撃し,「血と土」をうたう農民文学郷土文学が高く評価された。グリーゼの『冬』『永遠なる畑』などがそれである。またコルベンハイアーブルンク,カロッサ,シュテールらの作品も支持された。これらの作家,作品のうちには,必ずしも国家社会主義的傾向とはみなされないものもあり,第2次世界大戦後の評価は定まっていない。

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