ニューエコノミー(読み)にゅーえこのみー(英語表記)New Economy

デジタル大辞泉 「ニューエコノミー」の意味・読み・例文・類語

ニュー‐エコノミー(new economy)

ITバイオテクノロジーなどの技術革新背景に生まれた産業の総称。新産業構造。→オールドエコノミー
需要供給一致した経済構造のこと。経済は過熱も後退もせず、インフレも失業もなく、景気は長期的に拡大していく。1990年代のIT技術革新やグローバル化などを背景に、こうした理想的な経済状況が実現すると考えられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニューエコノミー」の意味・わかりやすい解説

ニューエコノミー
にゅーえこのみー
new economy

需要と供給が一致している経済構造のこと。一般に、需要が供給を上回るとインフレになり、供給が需要を上回ると失業率が上がる。もし、需要と供給が一致していればインフレも失業も起きない。従来の経済(つまりオールドエコノミー)では、需要にあわせた供給ができるようになるまで時間がかかり、需要と供給の一致はむずかしかった。好景気のときには需要に供給が追いつかずインフレになり、供給が軌道に乗ると供給過多になるほど製造して景気の後退を招き、結果として供給能力を縮小するためのリストラを行うということを繰り返してきた。しかし、コンピュータやインターネットを使う産業が発達することで、企業は顧客の需要に一致する適切な供給ができるようになった。アメリカの情報通信産業を中心とした好景気と失業率の低下が、こうした経済構造を背景としていると分析され、「ニューエコノミー」ということばが1990年代の末に登場した。

[中島由弘]

『OECD編、日本経済調査協議会訳『ニューエコノミー?成長における技術革新と情報技術の役割』(2001・日本経済調査協議会)』

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知恵蔵 「ニューエコノミー」の解説

ニューエコノミー

IT(情報技術)とグローバル化の進展により、米国経済で景気循環が消滅し、インフレなき成長が持続するという説から生まれた概念。情報化には生産性を向上させると同時に、過剰在庫を減らす効果がある。また、グローバル化は最小費用で原材料、部品や資金の調達を可能にするので、好景気が続いてもインフレが生じないとされた。米国のGDP成長率は1991年にマイナス0.5%を記録した後、同年第2四半期から9年近くにわたり戦後最長の景気拡大を迎えた。92年から99年の間の平均成長率は3.6%、インフレ率(GDPデフレーター)は2.0%であった。これを反映して、ニューヨーク株価やナスダック指数は驚異的な伸びを示した。しかし2000年後半から顕在化した米国経済の減速で、景気循環が消滅するとの楽観説は事実上、否定された。その一方で、生産性の向上は統計的にさほど目立たないことが「謎」とされていた。しかし01年1月に大統領経済諮問委員会が、1973〜75年の生産性上昇率が年平均1.4%だったのに対し、95〜2000年の上昇率が3.1%と発表したことから、確かに生産性を伸ばす効果が持続しているとの説が有力になった。

(石見徹 東京大学教授 / 2007年)

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「ニューエコノミー」の解説

ニューエコノミー

ITの活用によって極限まで在庫調整が加速された結果、見込み生産や需給のタイムラグが消失し、それによって景気循環がなくなるのではないかという仮説に基づいた新しい経済環境のこと。「ITによる景気拡大は永遠に続く」という意味合いを持っており、90年代後半、アメリカを中心に盛んに提唱されたが、実際にはITバブルの崩壊とともに景気後退が始まった。

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