ヌマガヤ(英語表記)Moliniopsis japonica (Hack.) Hayata

改訂新版 世界大百科事典 「ヌマガヤ」の意味・わかりやすい解説

ヌマガヤ
Moliniopsis japonica (Hack.) Hayata

原野山中湿地に生えるイネ科多年草。大型で剛直な草で,短い根茎があって走出枝はなく,叢生(そうせい)し,しばしば群生する。茎は高さ60~120cm,直立し,やや細いが硬く,葉のついた基部から長く抽出し,花序まで節がない。葉は茎の基部に数枚あり,根生およびやや根生,硬く,やや立ち,長い線形で,長さ50cm,幅1cmほどに達し,色の淡い表は途中でねじれ下を向く裏葉となり,裏は濃い緑色をしている。花序は夏から秋に出て,長さ20~40cmで散開した円錐状,淡い紫色を帯びた淡緑色に見える。多数の枝を斜上し,ややまばらに多数の小穂をつける。小穂は長さ8~12mmの線状披針形で,短い柄があり,少し光沢があり,5~8個の小花がある。苞穎(ほうえい)2個は不同長,小花は長さ5mmくらいで,基盤に毛がある。南千島から日本全土,朝鮮を含む極東地方の固有種で,ヌマガヤ属Moliniopsisはヌマガヤただ1種から成る固有属である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌマガヤ」の意味・わかりやすい解説

ヌマガヤ
ぬまがや / 沼茅
[学] Moliniopsis japonica Hayata

イネ科(APG分類:イネ科)の水生多年草。根茎は短く、根は堅い。稈(かん)は高さ0.3~1メートル、基部は節間が詰まって肥厚し、数珠(じゅず)状になる。葉は、表面は粉白色を帯び、脈が隆起し、葉身と葉鞘(ようしょう)の間に関節がある。8~10月、稈の先端に長さ10~40センチメートルの円錐(えんすい)花序をつける。小穂は披針(ひしん)形で長さ0.8~1.2センチメートル、灰紫色を帯び、小花が3~5個ある。包穎(ほうえい)は小さく、護穎は長さ4~5.5ミリメートル、3本の脈があり、基盤の毛束は長さ約1ミリメートル。山地湿原に群生し、北海道から九州、および朝鮮半島に分布する。名は、沼地に生えることによる。

[許 建 昌 2019年9月17日]

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世界大百科事典(旧版)内のヌマガヤの言及

【湿原】より

…さらに泥炭の集積が進み,ミズゴケ類が生育しはじめて高層化してくると中間湿原に発達する。この段階では,スゲ類に加えてヌマガヤ,ワタスゲ,オオイヌノハナヒゲなどの植物が多くなる。全域のミズゴケが生長しさらに高層化すると,ドーム状に中央がもり上がる。…

※「ヌマガヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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