ネコひっかき病(読み)ねこひっかきびょう(英語表記)Cat-Scratch Disease

家庭医学館 「ネコひっかき病」の解説

ねこひっかきびょう【ネコひっかき病 Cat-Scratch Disease】

[どんな病気か]
 ネコにひっかかれたり、かまれたりした後、リンパ節(せつ)が腫(は)れる病気です。ネコが保有するバルトネラの感染が原因とされています。ネコは保有するだけで、発病はしません。
 誰でもかかりますが、ネコと接触することが多いためか、子どもに多くみられます。家族発生や小流行の報告もあります。
[症状]
 ネコにひっかかれたところに数日後に赤紫色の発疹(ほっしん)や小水疱(しょうすいほう)ができ、化膿かのう)したり、小潰瘍(しょうかいよう)ができたりしますが、これは自然に治ります。
 傷を受けてから2~5週間後に、発熱頭痛、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)がおこり、傷の近くのリンパ節が1~5cmの大きさに腫れ、押すと痛みます。部位は、頸部(けいぶ)、わきの下、鼠径部(そけいぶ)が多く、1か所だけが腫れることが多いものです。このリンパ節の腫れは、2~3か月間続いて治ることもありますが、ときには、半年~1年にわたって続いたり、化膿(かのう)して破れることもあります。
 眼・リンパ節型、扁桃炎(へんとうえん)型、脳膜炎(のうまくえん)型などの病型もありますが、まれで、後遺症(こういしょう)を残さずに治ります。
[治療]
 熱があれば安静を保ち、腫れたリンパ節は冷湿布(れいしっぷ)します。塩酸ミノサイクリンやレボフロキサシンなどが有効で化膿も防止されます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネコひっかき病」の意味・わかりやすい解説

ネコひっかき病
ねこひっかきびょう

ネコにひっかかれたり、かまれたりして数日後に発症する感染症で、ネコは発症せず媒介するだけである。原因はウイルスとされているが、病原体はまだ分離されていない。日本には少ないが、世界的に蔓延(まんえん)している。咬傷(こうしょう)などを受けた部位に赤紫色の発疹(ほっしん)ができ、炎症症状がみられ、1~3週後に所属リンパ節の腫脹(しゅちょう)をおこす。全身症状として悪寒や発熱などを伴うことが多い。リンパ節炎は潰瘍(かいよう)や化膿(かのう)をおこし、この状態が2~6週間続くと腫(は)れたリンパ節が破れて膿(うみ)を出し、熱も下がって自然治癒する。

 治療としてはテトラサイクリンが有効で、初期なら化膿を防止して病期の短縮に役だつ。なお、必要に応じて腫大したリンパ節の切除も行われる。

[柳下徳雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネコひっかき病」の意味・わかりやすい解説

ネコひっかき病
ネコひっかきびょう
cat-scratch disease

ネコにひっかかれたり,ときには外傷がなくてもネコに接触したのちに起る疾患で,所属リンパ節炎を特徴とする。おそらくウイルスが病原体であろうと思われる。潜伏期は数日から数週間で,悪寒,発熱があり,無痛性のリンパ節腫脹が数週間から数ヵ月続き,ときに化膿する。テトラサイクリンが多少効果がある。

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