ネズミイルカ(英語表記)Phocoena phocoena; harbour porpoise

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネズミイルカ」の意味・わかりやすい解説

ネズミイルカ
Phocoena phocoena; harbour porpoise

クジラ目ハクジラ亜目ネズミイルカ科ネズミイルカ属。体長は約 1.8m以下。最大体長は約 2m。体重は 45~70kgである。出生体長は 70~90cm。背部および体側は藍ねずみ色で,腹部白色である。胸鰭 (むなびれ) と尾柄部は紺青色を呈する。腹部と体側の境はぼかされており不明瞭。胸部はややねずみ色がかっている。胸鰭上面は藍ねずみ色で,口角に向って同色の細い帯が伸びる。体型はなだらかな細長い楕円形である。噴気孔は1個で頭部正中線上にある。胸鰭後方付近が最も太い。頭部は小さく,丸みを帯びており嘴 (くちばし) はない。背鰭は体の中央よりやや後方に位置し,高さ 15~20cm程度で三角形状であり,先端が後方にやや傾く。歯は小さくへら状で先端が丸く,上下顎骨に左右 19~28対ある。8頭以下の小群で行動するが,索餌回遊の際は 50~100頭の群れをなすことがある。泳ぎが速く,船に近づいて船首波横波に乗る。出産期は春から夏のなかばにかけてである。食性範囲が広く,30cm以下の魚類やイカ類を捕食しており,おもに底生性魚類および中層性のニシンやサバを食べる。分布北半球寒帯および亜北極海域で,通常沿岸浅所に生息するが,大西洋では沖合いにも生息する。沿岸に設置される定置網刺網などによって混獲される。水族館展示用として飼育される。

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改訂新版 世界大百科事典 「ネズミイルカ」の意味・わかりやすい解説

ネズミイルカ (鼠海豚)
harbour porpoise
Phocoena phocoena

歯クジラ亜目ネズミイルカ科の哺乳類。北半球の温帯~寒帯の沿岸域に生息する小型イルカ。背面は灰黒色で,腹側の白色域との境は不明りょう。背びれは三角形,くちばしはない。歯は上下左右に各19~28本あり,歯冠部は扁平でスペード状。交尾期は夏で,妊娠期間は約11ヵ月。子は体長70~90cmで生まれ,約半年で離乳し,3~4歳で体長1.5~1.6m(体重45~60kg)で成熟する。2mに達するものはまれ。1~2年に1産。寿命は15年前後。ふつう10頭以下の群れで生活するが,これが集まって数十頭の群れをなすこともある。船首波に乗らず,船で接近するのは困難である。遊泳速度は最高22km/h。餌は,イカ,ニシン,スケトウダラ,サバなど多様な群生魚。日本近海では,親潮の勢力下の大陸棚部に生息し,各地の沿岸で網漁具で混獲され保護上問題となっている。北海道には一年中見られる。黒海では漁獲対象となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネズミイルカ」の意味・わかりやすい解説

ネズミイルカ
ねずみいるか / 鼠海豚
common porpoise
[学] Phocoena phocoena

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目ネズミイルカ科のハクジラ。体長1.8メートル、体重80キログラムまでの小形種。北半球の温・寒帯の浅海に分布する。黒海のものは別亜種とされる。背面は黒色で、腹面は白色。歯は小さく上下左右おのおの26~28本、歯冠部は扁平(へんぺい)である。妊娠期間は約11か月、体長90センチメートルぐらいの子を6~7月に出産する。1産1子。子は3、4年で性成熟に達する。2、3頭の小群で行動する。雑食性が強いが、おもにイワシ、ニシン、タラなどを食べる。黒海では巻網で大量に捕獲したため近年資源が激減した。天敵はサメ、シャチなどである。南半球やカリフォルニア湾などには近似種が分布する。

 なお、分類上、ネズミイルカ科(ネズミイルカ属、イシイルカ属、スナメリ属の3属を含む)を科として独立させず、マイルカ科に含める場合もある。

[粕谷俊雄]


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