ノグチゲラ(英語表記)Sapheopipo noguchii; Okinawa woodpecker

改訂新版 世界大百科事典 「ノグチゲラ」の意味・わかりやすい解説

ノグチゲラ (野口啄木鳥)
Pryer's woodpecker
Sapheopipo noguchii

キツツキキツツキ科の鳥。全長約31cm。全身赤みを帯びた暗褐色をしていて,下面は淡い。翼と尾は黒褐色で,翼には小さな白斑があり,成鳥の雄と雌の頭部は暗褐色だが,若鳥の雄では頭頂が赤い。くちばしは灰白色。沖縄本島北部にのみ分布し,イタジイやオキナワウラジロガシなどの常緑広葉樹原生林にすむ。枯木,倒木,朽ちた切株などにくちばしで穴を開け,甲虫類の成虫幼虫,あるいはアリ類の成虫,さなぎなどを食べる。キョッキョッと鳴き,繁殖期には枯れた幹や枝をくちばしでたたき,タラララ……という音を出す。イタジイなどの枯れた樹幹に巣穴を掘るが,繁殖生態についてはよくわかっていない。世界で沖縄本島だけに分布する。1886年にプライヤーT.W.Pryerが採集したが,英名はこれにちなむ。現在,沖縄県国頭村の西銘岳,伊部岳から与那覇岳,東村の伊湯岳にかけての森林に約200~600羽程度が生息していると推定されているが,森林の伐採が進み,このままでは絶滅のおそれがある。特別天然記念物に指定されている。
キツツキ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノグチゲラ」の意味・わかりやすい解説

ノグチゲラ
Sapheopipo noguchii; Okinawa woodpecker

キツツキ目キツツキ科。全長 31cm。背,腰,胸,腹が赤みを帯びた暗褐色で,と尾は黒く,初列風切に白斑がある。雄は頭上と後頭が暗赤色を帯びているが,雌は暗褐色。生息域は沖縄島北部の原生林で,きわめて狭い範囲にかぎられている。生息数は 1960年代から 1980年代にかけて森林伐採の影響で急速に減少し,近年ではマングースやノネコ,ハシブトガラスなどに襲われ,さらに減っている。およその生息数は,1991~93年には 500羽,2009年の報告では 320~390羽,つがい数も 100以下と推定されている。1977年に国の特別天然記念物(→天然記念物)に指定された。環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧IA類にあげられている。沖縄県県鳥

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノグチゲラ」の意味・わかりやすい解説

ノグチゲラ
のぐちげら / 野口啄木鳥
Pryer's woodpecker
[学] Sapheopipo noguchii

鳥綱キツツキ目キツツキ科の鳥。中形種で全長約30センチメートル、全体に暗赤色を帯びた褐色で、下面はやや淡く、翼には小白斑(はくはん)が少数あり、雄は頭上が赤い。世界中で沖縄本島北部山地の天然林にのみ生息し、近くに近縁種がいるわけでもない、という珍しいキツツキであるが、この天然林の伐採とアメリカ軍の演習地化によって、生息地が縮小し生存が危ぶまれている。1972年(昭和47)に国の天然記念物に指定されたが、生息環境の保護を伴っていないので、まだ絶滅のおそれがある。生態はよく調査されていない。

[浦本昌紀]


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百科事典マイペディア 「ノグチゲラ」の意味・わかりやすい解説

ノグチゲラ

キツツキ科の鳥。翼長16cm。全体に赤味がかった暗褐色で,翼や尾は黒褐色。下面は淡い色。沖縄本島北部の森林にのみ生息する固有種。スダジイなどの樹洞に営巣し,昆虫,クモ,植物の果実をおもに食べる。キョッキョッと鳴く。個体数は数百羽しかいないとみられる。特別天然記念物。絶滅危惧IA類(環境省第4次レッドリスト)。

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