ノディエ(読み)のでぃえ(英語表記)Charles Nodier

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノディエ」の意味・わかりやすい解説

ノディエ
のでぃえ
Charles Nodier
(1780―1844)

フランス作家ブザンソンに生まれ、パリに没す。父の英才教育を受け早熟な少年期を過ごす。20歳でパリに出、神秘思想家グループに共鳴する。『追放者たち』(1802)を発表、小説家として一歩を踏み出す。各地を転々とし、評論活動、研究活動ののちパリに定住。ロマン主義的小説『ジャン・スボガール』Jean Sbogar(1818)によって創作活動を再開。アルスナルの自宅サロンをパリ文学中心に盛り上げ(1824~30)、ユゴーのロマン主義運動を、その初期において擁護し大きな影響を与えた。ネルバル先駆けて「夢」を重視し(「眠りは思考のもっとも明晰(めいせき)な状態である」)、『パン屑(くず)の妖精(ようせい)』La Fée aux Miettes(1832)をはじめ幻想物語の傑作を残した。「狂気」「愛」「復活」のテーマを繰り返し取り上げ、作品を通して古代の「黄金時代」の回復を願った。代表作に『スマラ』Smarra(1821)、『トリルビー』Trilby(1822)、『ボヘミアの王と七つの城の物語』(1830)、『イネス・デ・ラス・シエラス』(1837)など。

[西尾和子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ノディエ」の意味・わかりやすい解説

ノディエ
Charles Nodier
生没年:1780-1844

フランスの作家。ブザンソンに生まれ,大革命前後の激動期に多感な少年時代を過ごす。1813年以後はジャーナリストとして活躍。内外の文学者を紹介する記事や書評を書いてロマン派成立に寄与する。24年にパリのアルスナル図書館長に任命されたのを機に,館内の自宅に文芸サロンを開き,一時期ロマン派の中心的な存在となった。作品は文学,昆虫学,言語学など多岐にわたるが,彼の本領は《スマラ》(1821),《トリルビー》(1822),《パン屑の妖精》(1832)などの幻想小説にある。これらの作品は,S.フロイトやシュルレアリスム以前に,夢や狂気を通して〈無意識〉を扱った文学として,今日高く評価されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノディエ」の意味・わかりやすい解説

ノディエ
Nodier, Charles

[生]1780.4.29. ブザンソン
[没]1844.1.27. パリ
フランスの小説家。フランス革命の動乱のさなかに少・青年時代を過し,パリに出て小説家を志したが,ナポレオンを風刺する詩を書いたため故郷に逃れ,次いで亡命,イリリア (現スロベニア領) で図書館員をつとめ,王政復古後帰国,1824年からパリのアルスナル図書館長となり,ロマン派のサロンとして自宅を開放した。幻想と悪夢に満ちた世界を描いた短編集『スマラ』 Smarra (1821) ,『トリルビー』 Trilby (22) ,『パン屑の妖精』 La Fée aux miettes (32) などによって,ネルバルの先駆とされる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ノディエ」の意味・わかりやすい解説

ノディエ

フランスの作家。1823年パリのアルスナル図書館長となり,そのサロンにユゴーら文学者を集めロマン主義運動の中心になった。幻想的な作風で,《トリルビー》(1822年),《パン屑の妖精》(1832年)が代表作。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のノディエの言及

【ドビュロー】より

…16年パリのタンプル大通りに建てられたフュナンビュール座の出し物に加わり,白塗りの顔に白い衣装をつけたメランコリックなピエロの役柄を再創造して,パリ中の人気者になった。彼の芸は,後に彼の伝記を書いた文芸評論家・小説家のジャナンJules‐Gabriel Janin(1804‐74)の熱狂的支持の影響もあって,当時の多くの文学者をフュナンビュール座の後援者とさせ,C.ノディエやシャンフルーリなどが台本を提供するほどになった。M.カルネの映画《天井桟敷の人々》に描かれたJ.L.バロー扮するバティストの役は,当時のフュナンビュール座におけるドビュローの人気を忠実に伝えている。…

【ピエロ】より

… 定期市の出し物を通じて民衆のもっとも代表的な喜劇的人物となったピエロは,19世紀に入って,パリの通称〈犯罪大通り〉と呼ばれたブールバール・デュ・タンプルの一角に1816年に開場したフュナンビュール座において,J.G.ドビュローの演じるパントマイムの主役として新しく生まれ変わる。ドビュローのパントマイムも,初期は他愛ないドタバタであったが,28年,C.ノディエが彼のために書いた《黄金の夢Le songe d’or》の成功によって,一躍T.ゴーティエ,J.G.ジャナンなど,知識人たちの注目を集めるようになり,ピエロは文学者など知識人の愛好の対象となった。映画《天井桟敷の人々》の中ではJ.L.バローが演じたドビュローの代表作《古着屋》(1842)は,舞台で涙を流す新しいピエロ像を生み,〈悲しきピエロ〉のイメージを定着させた。…

※「ノディエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android