ハコフグ(読み)はこふぐ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハコフグ」の意味・わかりやすい解説

ハコフグ
はこふぐ / 箱河豚
[学] Ostracion cubicus

硬骨魚綱フグ目ハコフグ科に属する海水魚。本州中部以南の日本沿岸各地、および西太平洋インド洋の熱帯域に広く分布する。体は骨板状の硬い甲らに覆われ、上下両顎(りょうがく)、ひれ、尾柄(びへい)部のみが可動である。甲らの横断面は四角形。甲らには棘(とげ)はなく滑らかである。体色は黄褐色で甲らの各鱗板(りんばん)に淡青色点がある。生時には甲らに鮮やかな青色斑(はん)が現れる。体長は30センチメートルに達する。腹びれはなく、普通は背びれと臀(しり)びれを使ってゆっくりと泳ぎ、敵に襲われると尾びれを使って逃げる。産卵期は夏で、雄1尾に雌2~4尾でハレムを形成する。卵は分離浮性卵である。幼魚は甲らが鮮やかな黄色で黒点が散在する。肉は無毒で、甲らは熱を加えると容易にとれるので食用にする所もある。また、本種は、ほかの魚と同じ水槽で飼うことはできない。皮膚から粘液毒を出してほかの魚を弱らせるからである。

 ハコフグはハコフグ科Ostraciidaeの魚の総称でもある。日本産のハコフグ科の魚は、コンゴウフグLactoria(コンゴウフグ、ウミスズメ、シマウミスズメ)、ハコフグ属Ostracion(ハコフグ、クロハコフグ)、ラクダハコフグRhinesomus(ハマフグ、ラクダハコフグ)の3属7種が知られている。本科の魚は硬い甲らに体を包まれ、腹びれを欠くのが特徴。コンゴウフグ属の体甲の横断面は五角形で背中に隆起があり、眼前棘(きょく)と腰骨棘もある。ハコフグ属の体甲の横断面は四角形で隆起も棘もない。ラクダハコフグ属の体甲の横断面は三角形で眼前棘、腰骨隆起があり背中に棘もある。本科の魚は、いずれも温帯と熱帯の浅海域に生息する。なお、本科の分類上の位置については従来論議があったが、最近、骨格の形質に基づいてモンガラカワハギ亜目に属することが確認された。

[松浦啓一]


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改訂新版 世界大百科事典 「ハコフグ」の意味・わかりやすい解説

ハコフグ (箱河豚)
trunk fish
boxfish

フグ目ハコフグ科Ostraciontidaeの海産魚の総称,またはそのうちの1種を指す。日本近海では7種が知られているが,いずれも本州中部以南の各地沿岸にすみ,さらに南方,インド洋から南アフリカにわたって分布するものも少なくない。体の大部分は硬い骨板状のうろこで包まれて箱形を呈し,そのため体を屈曲させることができず,甲から裸出した尾柄部と尾びれを左右に振って泳ぐ。筋肉が発達していないのでほとんど食用にはしない。無毒。

 ハコフグOstracion tuberculatusは本州中部以南,フィリピン,インド洋沿岸,南アフリカに分布。日本では同科の中でもっとも普通種。体の横断面ははしご形で,体表に棘状(きよくじよう)突起はない。体色は黄色で,個々のうろこに淡青色の円紋がある。全長15cm内外。卵は浮遊卵。コンゴウフグLactoria cornutusは頭部に前上方に向かう眼前棘と腹部後端に後方に向かう腰骨棘がそれぞれ1対ずつある。体の横断面は五角形。ラクダハコフグRhinesomus gibbosusは横断面が三角形。
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百科事典マイペディア 「ハコフグ」の意味・わかりやすい解説

ハコフグ

ハコフグ科の魚の総称。日本近海では7種が知られている。もっとも普通に見られるハコフグは,全長15cm内外。フグ科の魚とちがい無毒。体は多数の骨板からなる堅い甲でおおわれる。本州中部以南の太平洋,インド洋に分布し,沿岸に多い。甲は焼けば容易にはがれ,食用にする地方もある。
→関連項目フグ(河豚)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハコフグ」の意味・わかりやすい解説

ハコフグ
Ostracion cubicus

フグ目ハコフグ科の海水魚。全長 40cm内外。体は骨板から成る甲に包まれ,前からみると四角形になっている。体色は黄褐色で,青色の斑紋がある。鰭は黄橙色。沿岸に普通にみられる。近縁種に額に1対のとげをもつウミスズメなどがある。無毒なので,食用とする地方もある。北海道以南に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のハコフグの言及

【甲】より

…これらの原始魚類の内骨格は軟骨性であったらしい。 硬骨魚類には甲といえるものはないが,それに近いものとしてハコフグ類の外骨格がある。ハコフグでは,口,目,鰓孔(えらあな),肛門,ひれの付け根のほかは,全体表が堅固な箱のような構造になっている。…

※「ハコフグ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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