ハタオリドリ(読み)はたおりどり(英語表記)weaver

翻訳|weaver

改訂新版 世界大百科事典 「ハタオリドリ」の意味・わかりやすい解説

ハタオリドリ (機織鳥)
weaver

スズメハタオリドリ科Ploceidaeの鳥の総称全長11~26cm。一部の種では繁殖期に雄の尾羽が著しく長く伸長し,それを入れると全長が50cm近くなる。くちばしは短くて,分厚く,先がとがっている。体は小さいものが多いが,がんじょうである。翼は比較的丸く,初列風切が10枚ある。カエデチョウ科とよく似ていて同一の科と見るむきもあるが,ハタオリドリ科の雛にはカエデチョウ科の雛の口中に見られる色のついた突起がない。東南アジア,インド,アフリカ大陸に分布し,150種ほどが知られているが,圧倒的多数の種はサハラ以南のアフリカにすむ。この科は比較的よくまとまった分類群で,大きく3グループに分けられる。オニハタオリ亜科BubalornithinaeにはアフリカにいるウシハタオリBubalornis albirostris(英名buffalo-weaver)などがある。スズメ亜科Passerinaeにはスズメイエスズメなどがあり,旧世界に広く分布していて,北アメリカなどに移入されている。種数のもっとも多いのはハタオリドリ亜科Ploceinaeで,その大部分は熱帯アフリカにいる。多くの種は雌雄異色で,雄の生殖羽は赤色,オレンジ色,黄色,白色,黒色などはでで華麗な色彩をもち,飼鳥とされる。雄の非生殖羽と雌は黄褐色に黒い縦斑が散在したじみな色が多い。森林からサバンナ草原,半砂漠荒地と幅広い生息環境にすむ。農耕地ととくに関係の深いものがあり,ときには大群で畑に現れ,穀類に大害を与える。繁殖の性関係は一夫一妻,一夫多妻,乱婚などさまざまであり,大なり小なりコロニーをつくって繁殖する。1本の木に多数が巣をつり下げるズグロウロコハタオリPloceus cucullatusや,いくつもの部屋のくっついた大きい塊状の巣を共同でつくるシャカイハタオリドリPhiletairus sociusは大集団となる。テンニンチョウシコンチョウの仲間はカエデチョウ科や他のハタオリドリ科の鳥に托卵する。しかし,その他のハタオリドリ類は枯草や生草を使って袋状の巣をつくり,なかには精巧な草籠を編み上げ,チューブ状の出入口を取りつけるので有名なものもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハタオリドリ」の意味・わかりやすい解説

ハタオリドリ
はたおりどり / 機織鳥
weaver

鳥綱スズメ目ハタオリドリ科に属する鳥のうち、14属109種の総称。105種がアフリカに、4種が東南アジアに分布する。全長11~18センチメートルの小鳥であるが、植物の茎葉で精巧な巣をつくることにかけてはその右に出るものはいない。巣には、球形で側面から出入りするものや、下に長い漏斗(ろうと)状の出入口をぶら下げたヘチマ様のものもある。この類は、餌(えさ)としては草本の種子漿果(しょうか)を好むが、昆虫やクモもとる。

 シュウダンハタオリドリ類2種はアフリカ中・東部に分布し、全長約13センチメートル。ハイガシラシュウダンハタオリPseudonigrita arnaudiは頭頂が灰白色、全体は淡赤色がかった灰褐色であり、クロガシラシュウダンハタオリP. cabanisiは頭頂が黒色、全体は淡褐色の鳥である。アカシアなどの枝に球形あるいは漏斗状の、じょうぶな繊維で編んだ巣を集団状に無数につり下げる。多くの漏斗がぶら下がったようすは壮観である。シュウダンハタオリドリがつくるのは個々の巣の集団であるが、それと異なる共同の巣をつくるものがいる。シャカイハタオリドリPhiletairus sociusというアフリカ南部に生息する1属1種の鳥がそれで、樹上に巨大な藁(わら)屋根をかぶせたような巣をつくる。この巣は数百羽の鳥が共同で使用するが、繁殖やねぐら用だけでなく、生活すべてに必要なもので、絶えず修理されて100年以上も使用することが知られている。本種は黒地の羽を淡黄色で縁どりした鱗(うろこ)状の外観をもつ黄土色の鳥で、全長約14センチメートルである。

 なお、ハタオリドリ類に近縁の仲間には、アフリカに分布する大形種のウシハタオリBubalornis albirostrisなどを含むオオハタオリ類がある。

[坂根 干]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハタオリドリ」の意味・わかりやすい解説

ハタオリドリ
Ploceidae; weavers, widowbirds

スズメ目ハタオリドリ科の鳥の総称。全長 12~24cm。109種からなる。大部分がアフリカに,少数が南アジアや東南アジアに分布する。植物の葉を細く裂いて巧みに織り込んで球形の巣をつくることからその名がついた。巣は木の枝などから吊り下げる,木の枝に巧みに丸く編み込む,共同で大きな巣をつくりそこにつがいごとに巣部屋を構えるなど多様である。雄の羽色は,繁殖期には鮮やかな黄,赤,黒色などになるが,非繁殖期には雌と同じようにスズメに似た地味な羽色になる。は短く,円錐形をしている。森林やサバナ,草原にすみ,おもに種子食だが,昆虫類も食べる。コウヨウチョウ Quelea quelea のように 100万羽をこす群れで移動しながら農作物に大きな被害を与える種もある。

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