蜂の子(読み)はちのこ

精選版 日本国語大辞典 「蜂の子」の意味・読み・例文・類語

はち【蜂】 の 子(こ)

ハチ幼虫。特にクロスズメバチの幼虫をいい、主に長野県地方で食用とする。《季・春/秋》
※俳諧・桜川(1674)春二「蜂の子も巣はくびかせのうるしかな〈林元〉」
② 「みみず(蚯蚓)」の古名。〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕
③ 榧(かや)の実の細長い形のもの。〔大和本草批正(1810頃)〕

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デジタル大辞泉 「蜂の子」の意味・読み・例文・類語

はち‐の‐こ【蜂の子】

ハチの幼虫。特に、クロスズメバチの幼虫。信州地方で甘露煮や蜂の子飯などにして賞味 秋》
カヤ(榧)の実のこと。

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改訂新版 世界大百科事典 「蜂の子」の意味・わかりやすい解説

蜂の子 (はちのこ)

ハチの幼虫の意であるが,さなぎやかえりたての若バチをもいう。長野県などで昔から食用とされてきたもので,クロスズメバチ(ジバチ)を主とするが,オオスズメバチ,ミツバチ,アシナガバチなども用いられる。フライパンでからいりして塩をふったり,甘辛く煮つけて食べる。煮つけたものを炊きたての飯に混ぜるのが〈ハチの子飯〉で,伊那地方のザザムシトビケラなどの幼虫)などを含めた信州の昆虫食の中で最も美味とされる。ジバチ,ミツバチの子の缶詰があり,成分はタンパク質15.7g,脂質5.7g,糖質35.7g,鉄分6.7mg(いずれも100g中)などとなっている。
執筆者:

《医心方》では薬として虫魚類72種類中に〈蜂子〉が挙げられている。珍味とされているのはクロスズメバチの幼虫だが,薬にされるのは〈土蜂子〉(ツチバチの1種の幼虫)や〈大黄蜂子〉(キボシアシナガバチの幼虫)と,〈蜜蜂子〉(トウヨウミツバチの幼虫)である。隋王朝の女性たちは,ハチの子と人の乳汁を原料とした美顔剤を塗っていた。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「蜂の子」の意味・わかりやすい解説

蜂の子【はちのこ】

ハチの幼虫。主として食用の対象となるのはクロスズメバチで,夏,秋に親バチをいぶし出して巣をとり,幼虫や蛹(さなぎ)をそのまま醤油で煮たり,いったり,飯に炊(た)き込んだりする。缶詰もある。

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世界大百科事典(旧版)内の蜂の子の言及

【郷土料理】より

…かつて駿河地方から生のアワビを運ぶために考案された料理で,保存性が高く,薄切りにして,からしじょうゆで食べることが多い。 ハチの子,ザザムシなど信州ではイナゴはもとより,ハチの子,ザザムシ,カイコのさなぎなどの昆虫をつくだ煮や空揚げなどにする。ハチの子はスズメバチやジバチの幼虫,ザザムシは伊那地方の名物で,天竜川でとるトビケラ,ヘビトンボなど水生昆虫の幼虫である。…

【ハチ(蜂)】より

…はちみつを収納している房も蜜蠟(みつろう)として薬であった。ミツバチのほかジバチの幼虫やさなぎは〈ハチの子〉として長野県や岐阜県の山間では食用とした。その巣は民間薬として各種の出血や痛みを止めるのに用いられた。…

※「蜂の子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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