花相撲(読み)はなずもう

精選版 日本国語大辞典 「花相撲」の意味・読み・例文・類語

はな‐ずもう ‥ずまふ【花相撲】

〘名〙
① (「はな」は祝儀の意) 春秋二期に興行した本場所の相撲に対して、それ以外の相撲。もと木戸銭をとらず、客の祝儀だけで興行したところからいった。現在では、本場所終了後行なわれる「引退相撲大会」「福祉相撲大会」などをいい、勝敗は、番付や、給料には関係しない。
狂歌徳和歌後万載集(1785)三「春ならで秋のちぐさの花ずまふさそはぬ風に羽織ちりめん」
② 花合(はなあわせ)と同じく、東西に分かれ、種々の花を出しあって優劣を競う遊戯。また、これに添えた遊戯的な相撲。
浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)二「梅と桜の花相撲(はなスマフ)に枕の行司なかりけり」
※歌舞伎・名歌徳三舛玉垣(1801)三立「すりゃわたしらに此所で、惟喬様・惟仁様の、不徳をあぐる花角力、かの玄宗の戯れを、爰に写して」

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デジタル大辞泉 「花相撲」の意味・読み・例文・類語

はな‐ずもう〔‐ずまふ〕【花相撲】

《もと、木戸銭を取らず花(祝儀)だけを受けたところから》本場所以外に興行する相撲。現在では、本場所終了後に行われる慈善奉納・力士引退相撲などをいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「花相撲」の意味・わかりやすい解説

花相撲 (はなずもう)

本場所以外の相撲興行はすべてを花相撲という。引退相撲,慈善相撲,巡業相撲などがこれに当たり,相撲の勝敗は番付の昇降給金に関係しない。花相撲には本場所に見られぬ初切り(しよつきり),相撲甚句太鼓の打分け,五人抜きなどの余興が見られる。花相撲の〈花〉の語源は唐の〈纏頭(てんとう)〉からきている。中国では祝儀に綿布を与えると,これを頭に巻いて拝受する風習があり,これが日本の平安朝貴族に伝えられ,その風習とともに〈纏頭〉の文字を用い,引出物の意味である〈被物(かずけもの)〉といい,また祝儀の意である〈はな〉といった。この勝者に与える懸賞は,初めは麻布,衣類などを首や頭に巻いて謝意を表したが,この風習は長く続いて後世まで残り,懸賞の種類も衣類,食糧,武具,金銭の順に移り,江戸,明治のころには,勝力士に対して見物人が衣類を土俵に投げ込み,これを呼出しが返却するとき金銭と換え,これらも〈花〉といった。この〈はな〉の意が,本場所とは異なる〈御祝儀相撲〉の意である巡業相撲などに用いられるようになった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花相撲」の意味・わかりやすい解説

花相撲
はなずもう

日本相撲協会の相撲興行の一種で,本場所以外の興行をいう。番付や給金などには無関係の相撲で,慈善相撲,巡業相撲,あるいは引退相撲などを総称していう。本取組のほか,初っ切り相撲甚句,太鼓の打ち分け,5人抜きなど本場所ではみられない余興が行なわれる。花相撲の語源は,投げ銭目当ての野相撲の祝儀を「はな」といったところからきている。最近では海外巡業やトーナメント制試合なども行なわれている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「花相撲」の意味・わかりやすい解説

花相撲
はなずもう

本場所以外の興行のことで、勝負は番付や給金に関係がない。広い意味で地方巡業の興行も花相撲である。本場所には見られない初切(しょっき)り、相撲甚句(じんく)、飛びつき5人抜きなどの余興を行う。花相撲の語源は、江戸勧進相撲の初期のころ、見物人の投げ銭や祝儀(纏頭(はな))を目当てに行った辻(つじ)相撲、祭礼に際して催した興行相撲などから出ている。

[池田雅雄]

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