ハンバル派(読み)ハンバルは(英語表記)Ḥambal

改訂新版 世界大百科事典 「ハンバル派」の意味・わかりやすい解説

ハンバル派 (ハンバルは)
Ḥambal

イブン・ハンバルの弟子たちによって結成されたスンナ派イスラムの法学派。イブン・ハンバル自身がそうであったように,この派はハディースの徒の系統を引いて伝統主義的で,イジュマー(合意)をサハーバ(教友)のそれに限り,キヤース(類推)の行使を最小限にとどめ,思弁神学(カラーム)とイスラム神秘主義に強く反対した。ブワイフ朝のバグダード入城(946)まで,この地で最も勢力を誇る法学派であったが,ブワイフ朝のシーア派保護政策により,しだいに勢力を失った。イブン・タイミーヤと,その弟子イブン・カイイム・アルジャウジーヤの活躍により,14世紀にシリアで一時勢力を回復したが,あまりにも排他的であったため長続きしなかった。18世紀にイブン・タイミーヤの強い影響を受けたワッハーブ派アラビア半島に興り,現在ハンバル派に属しているのは,このワッハーブ派だけである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハンバル派」の意味・わかりやすい解説

ハンバル派
ハンバルは
Ḥanbalīyah

イスラム教スンニー派において公認されている四大法学派の一つ。アフマド・イブン・ハンバル Aḥmad ibn Ḥanbal (780~855) によって創設された。この法学派は宗教上の問題を解決するにあたって,その答えをすべてコーランと預言者スンナについての伝承 (ハディース) のなかに見出そうとする。個人の独自の意見や類推による法学的判断は抑制されるべきであると主張している。この法学派は,そのかたくなな保守主義のため,近現代の復古運動の源流として大きな影響を与えている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android