バイカモ(読み)ばいかも

改訂新版 世界大百科事典 「バイカモ」の意味・わかりやすい解説

バイカモ (梅花藻)
Ranunculus nipponicus(Makino)Nakai var.submersus Hara.

キンポウゲ科多年草。浅い流れやときには池にも生え,清く冷たい水を好む。ウメバチモ(梅鉢藻)ともいう。茎は長さ1m以上になり,節より白い根を出す。葉は水中に生じ,長さ2.5~8cm,3~5回分裂して糸状の裂片になる。葉の裂け方は茎の基部では3裂し,先端部は2裂になる。水から出せば,筆のようになる。葉柄の基部は鞘(さや)となり,短毛を生じる。花は葉腋(ようえき)に単生し,直径約1.5cm,花柄は長さ3~5cm。萼片は5枚,緑色,花弁は5枚,白色おしべ,めしべともに多数。花後,花柄はさらに伸長する。果実は瘦果(そうか)の集り。和名は花の形による。花期は6~8月。北海道本州に分布する。イチョウバイカモvar.nipponicus,オオイチョウバイカモvar.major Hara,ミシマバイカモvar.japonicus (Nakai) Haraは扇状の浮葉を生じる。

 バイカモの仲間はキンポウゲ属のバイカモ亜属とされたり,また,独立させてバイカモ属Batrachiumとされることもある。世界に約30種ほどが分布している。日本には,上記のもののほか,ヒメバイカモR.kazusensis MakinoとチトセバイカモR.yezoensis Nakaiがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイカモ」の意味・わかりやすい解説

バイカモ
ばいかも / 梅花藻
[学] Ranunculus nipponicus (Makino) Nakai var. submersus Hara

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の多年草。山野の澄んだ流れの中に生育する。茎は長さ1~2メートル、柔らかく、流れになびく。葉はすべて水中に沈み、3、4回3出複葉、裂片はさらに細く裂け、糸状となる。6~8月、径約1.5センチメートルでウメの花に似た白色花を1個ずつ腋生(えきせい)する。集合果は球形痩果(そうか)の背面に剛短毛がある。北海道と本州に分布する。沈水葉のほかに、水面に浮かぶ扇形の葉(浮葉)がある変種イチョウバイカモは、上高地(かみこうち)に分布する。北海道、静岡県の変種をイチョウバイカモにすることもある。ヒメバイカモR. kadzusensis Makinoはバイカモに近縁別種で、全体が小さく、果実の表面に毛がない。北海道、本州、九州、および朝鮮半島に分布する。

[門田裕一 2020年3月18日]


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百科事典マイペディア 「バイカモ」の意味・わかりやすい解説

バイカモ

ウメバチモとも。北海道,本州に分布し,浅くてきれいな流水中にはえるキンポウゲ科の多年草。葉は数回糸状に裂け,茎に互生する。花は夏,葉腋から出た花柄上に1個つき,水上に浮かび,径1〜1.5cm。白色5弁で,ウメに似ているところから梅花藻の名がある。本州中部に分布する変種のイチョウババイカモは,ときに掌状に裂けた水上葉をつける。

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