改訂新版 世界大百科事典 「バイヤン」の意味・わかりやすい解説
バイヤン
Édouard-Marie Vaillant
生没年:1840-1915
フランスの社会主義者。ドイツで医学をおさめ,フランス第二帝政下にインターナショナルに加盟。1871年コミューン議員となり,教育担当相として活躍した。その壊滅後,亡命地ロンドンでブランキ派と親交をもち,80年特赦による帰国後は同派の指導者の一人となる。84年パリ市会議員に当選,93年からはパリ第20区選出下院議員として死ぬまで活躍,同時に出身地シェール県にも社会主義組織を根づかせた。反教権主義や常備軍廃止などブランキの思想の継承を唱えたが,同時にマルクス主義にも理解のあった彼は,そのフランスへの適用を考え,ゲード派とほぼ一貫した友好関係を保ち,ブルジョア政党とのいっさいの協力を排する革命派の立場をとった。だが統一社会党成立後は,ジョレスと行動をともにした。労働総同盟(CGT)結成にあたっては推進役をも果たし,〈CGTの父〉ともいわれる。しかし第1次大戦勃発後は,祖国防衛の愛国主義的立場をとった。
執筆者:福井 憲彦
バイヤン
Roger Vailland
生没年:1907-65
フランスの作家。オアーズ県の生れ。シュルレアリスト,ジャーナリスト,共産党員(後にハンガリー事件で脱党)など,いろいろの〈季節(セゾン)〉を経,また小説,戯曲,エッセーなど多様なジャンルを手がけている。しかし,それらに共通して,体質のような18世紀流の自由思想,快楽主義と,だからこそそれを制御しようとする厳しいモラリスム,いいかえると個人主義と社会主義,芸術と政治の矛盾・相克のドラマがみられる。その点,小説ではデビュー作でレジスタンスを扱った《奇妙な遊び》(1945)やゴンクール賞受賞作《掟》(1957),反宗教の戯曲《エロイーズとアベラール》(1947),師と仰いだラクロ自身に語らせた形式の《ラクロ論》(1953),死後発刊されたエッセーの集大成《内的記述》(1968)などにバイヤンの面目は躍如としている。
執筆者:渡辺 淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報