精選版 日本国語大辞典 の解説
バックグラウンド‐ミュージック
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特定の空間環境の中に組み込まれた音響および音楽の総称。BGMの略称も使われている。1960年代までは,本来は音のない環境に一定の目的をもって組み込んだ音楽を指した。第2次世界大戦中に,勤労動員で工場で働く人の疲労を和らげ,事故を減少させるために作られたBBCの番組は,その典型である。医療における使用もBGMの重要な分野である。今日では,ラジオよりも,目的に合わせて録音されたレコードやテープが大量に,しかも,組織的に供給されている。そのための代表的なアメリカの企業ミュザックMuzak社の音楽例を分析した研究によれば,供給される音楽は既製の耳慣れた作品に基づきながら,楽曲形式,楽器編成,リズムや和声の点で,原曲よりも単純化され,また,音量の変化がおとなしくされている。
1970年代に入ると,このような狭義のBGMだけでなく,われわれの生活環境が含んでいる音楽や音響を,〈環境音楽〉として考察する傾向が強くなった。ここでは,寺院や教会の鐘,乗物や機械の音,川や風や木の音など,環境に内在する音響が広く含まれることになった。こうした傾向とともに狭義のBGMもいまだに使われている。また,制度として供給される音ではなく,自分自身で選択した音楽を小型のテープレコーダーとヘッドホンの組合せで聴き続け,音楽のない環境にいる時間を極端に減らすものも多くなっている。
執筆者:徳丸 吉彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…かつてムード・ミュージックと呼ばれていたような音楽を,1970年前後から,アメリカでの音楽業界紙の呼び方にならい,イージー・リスニング・ミュージックと言うようになった。その背景として,駅やデパートなどでいわゆる〈BGM(バックグラウンド・ミュージック)〉としてたえずスピーカーから音楽が流されることが一般化し,また単純労働の行われている作業場などでBGMの及ぼす作業能率へのプラス効果が研究されるなど,人間工学的な角度から音楽を利用しようとする社会的な動きが存在した。【中村 とうよう】。…
… 現代は,音楽の聞き方が柔軟な広がりを見せつつある時代といえよう。とくに日本では,洋楽・邦楽の各ジャンル,歌謡曲,民謡,ジャズ,ポピュラー音楽など,あらゆる種類の音楽が並立し,さらにCMソングやバックグラウンド・ミュージックまで数えれば,音楽は膨大な広がりをもっている。この状況は,とくに第2次世界大戦以後のマス・コミュニケーションの発展によるあらゆる種類の音楽への接近可能性と,音響機器の発達による録音再生および複製の広範な可能性によって開かれたものであり,新しい状況は音楽の概念そのものの変質と拡大を促したのである。…
※「バックグラウンドミュージック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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