バンデンバーグ決議(読み)ばんでんばーぐけつぎ(英語表記)Vandenberg Resolution

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バンデンバーグ決議」の意味・わかりやすい解説

バンデンバーグ決議
ばんでんばーぐけつぎ
Vandenberg Resolution

アメリカが、第二次世界大戦後冷戦の下で、軍事同盟に参加する条件などを定めた1948年のアメリカ上院の決議提案者の共和党上院議員で上院外交委員長のバンデンバーグの名にちなんで、このようによばれる。この決議はアメリカの外交政策として次の点をあげていた。〔1〕国連の拒否権を自発的合意により除去すること、〔2〕国連憲章に従った個別的および集団的自衛のための地域的およびその他の集団的取極(とりきめ)を漸進的に発展させること、〔3〕継続的かつ効果的な自助と相互援助に基づき、国家の安全に資する地域的および集団的取極に参加すること、〔4〕国連憲章第51条に基づく個別的および集団的自衛権を行使し平和維持に貢献すること、〔5〕国連軍を配置し、普遍的な軍備の規制と縮小を実現する合意を得るために最大限の努力をすること、〔6〕必要であれば国連強化のために憲章の再検討を行うこと。この決議は国連の強化に言及しているが、国連の集団安全保障体制が冷戦により機能しないのを背景に、その例外である集団的自衛権に基づく軍事同盟政策をアメリカが推し進める決意を明らかにしている。これに基づき北大西洋条約などの軍事同盟条約が締結された。なお、〔3〕の「継続的かつ効果的な自助と相互援助に基づき」という規定は、日米安全保障条約にも挿入され、日本再軍備と軍事力増強をアメリカが要求する根拠とされてきた。

[佐分晴夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バンデンバーグ決議」の意味・わかりやすい解説

バンデンバーグ決議
バンデンバーグけつぎ
Vandenberg Resolution

1948年6月 11日にアメリカ上院が地域的集団防衛の推進などを H.トルーマン大統領に勧告した決議。提案者 A.バンデンバーグ上院外交委員会委員長の名にちなんでこう通称される。前文と本文の6項から成る。伝統の孤立主義を破り,国連の集団安全保障体制を積極的に推進すべきアメリカの態度を明らかにし,翌 49年の北大西洋条約締結の基礎となった。なお,バンデンバーグ (1884~1951) はミシガン州選出の共和党上院議員で,第2次世界大戦前は孤立主義を主張,ルーズベルト大統領の政策を批判したが,戦後は冷戦状況のなかで積極的な国際協調主義,超党派外交に主導的役割を果した。

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百科事典マイペディア 「バンデンバーグ決議」の意味・わかりやすい解説

バンデンバーグ決議【バンデンバーグけつぎ】

1948年共和党上院議員バンデンバーグが提案,米国議会が採択した決議。米国は自国の安全に影響を及ぼす地域的・集団的防衛協定に参加すること,およびその協定は〈継続的・効果的な自助と相互援助〉の原則に基づくことを定めている。北大西洋条約,ANZUS(アンザス)条約日米安全保障条約などの基調をなす。

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世界大百科事典(旧版)内のバンデンバーグ決議の言及

【軍事顧問団】より

… アメリカはソ連陣営に対抗する世界政策の一環として非共産諸国に経済的・軍事的援助を与えるにあたって国内法を整備した。まず上院は1948年6月,個別的・集団的安全保障の取決めを結ぶにあたっては〈継続的かつ効果的な自助および相互援助を基礎〉とすべきことを求めるバンデンバーグ決議を採択した。これを受けてアメリカ政府は49年に相互防衛援助法を,51年には相互安全保障法(MSA)を,61年には対外援助法を制定し,各国と協定を結んでいった。…

【日米安全保障条約】より

…旧条約は本質的には基地貸与条約であって,日本は日本とその付近へのアメリカ軍の配備を認め,この軍隊は,(1)極東における国際の平和と安全の維持のため,および,(2)外部からの武力攻撃に対し日本の安全に寄与するために(日本政府の明示の要請がある場合は,外部の干渉による大規模な内乱・騒じょうの鎮圧を含む),〈使用することができる〉と規定したが,アメリカの日本防衛義務を明記しなかった。これは,アメリカが相互防衛条約を締結する際の基本原則である,上院のバンデンバーグ決議Vandenberg Resolution(1948)の〈自助と相互援助〉の条件を,当時の日本が備えていないと判断されたからであった。したがって旧条約は,日本の防衛力漸増へのアメリカの〈期待〉を記す前文とともに,終期を定めることなく〈暫定措置〉とすること(4条,前文)によって,将来日本がそのような条件を満たししだい,本格的な相互防衛条約によってとってかわられるべきことを予定していた。…

【バンデンバーグ】より

…46年上院外交委員長に就任し(‐1948),超党派外交の推進者として政府の冷戦政策を支え,〈トルーマン・ドクトリン〉(ギリシア・トルコ援助計画)や〈マーシャル・プラン〉(ヨーロッパ経済復興計画)の議会通過に大きな役割を果たした。48年には地域的安全保障体制の原則をうたった〈バンデンバーグ決議〉を起草した。【藤本 博】。…

※「バンデンバーグ決議」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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