パナーエフ(英語表記)Ivan Ivanovich Panaev

改訂新版 世界大百科事典 「パナーエフ」の意味・わかりやすい解説

パナーエフ
Ivan Ivanovich Panaev
生没年:1812-62

ロシアの小説家。貴族の家に生まれ,役人生活のかたわら1830年代から小説を書きはじめ,のちに文筆に専念した。初期にはロマン主義作風で上流社交界の生活を批判的に描いたが,40年代になってゴーゴリ流の〈自然派〉に変わり,都会の世態風俗を写実的に描く〈生理学的ルポルタージュ〉といわれる作品を次々と書き,中編《縁者たち》(1847)ではいわゆる〈余計者〉を主人公として扱った。また47年に詩人ネクラーソフとともに雑誌《現代人》の発行権を入手し,革命的民主主義者たちに誌面を提供した。死の前年に書いた《文学的回想》(1861)は,19世紀の30~50年代のロシア文壇の動きを知るうえでの貴重な資料である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パナーエフ」の意味・わかりやすい解説

パナーエフ
ぱなーえふ
Иван Иванович Панаев/Ivan Ivanovich Panaev
(1812―1862)

ロシアの作家、ジャーナリスト。由緒ある貴族の家に生まれる。最初ロマン主義作家として登場するが、ベリンスキーの思想的影響を受けて「自然派」へ移行。貴族の空虚な生活を風刺的に描いた中編『酒客譫妄(しゅかくせんもう)』(1840)、よけい者が主人公の中編『親族たち』(1847)、女性解放問題を扱った長編『田舎(いなか)の獅子(しし)たち』(1852)は、ツルゲーネフらに影響を与えた。1847年に雑誌『現代人』の出版権を獲得、ネクラーソフと協同でこれを発行。文学サロン主宰晩年の『文学的回想』(1861)はロシア文学史研究に欠かせぬ貴重な資料である。

[箕浦達二]

『井上満訳『文学的回想』全二冊(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android