パフォーマンス評価(読み)パフォーマンスひょうか(英語表記)performance assessment

最新 心理学事典 「パフォーマンス評価」の解説

パフォーマンスひょうか
パフォーマンス評価
performance assessment

パフォーマンス評価とは,知識や技能を実際に用いる活動やその成果について,直接的で組織的な観察を通して解釈する評価方法総称である。パフォーマンス評価では,学習者が課題(パフォーマンス課題という)を実行し成し遂げるプロセスやその結果としての成果に評価者が着目し,知識,技能の獲得や活用についてじかに把握し判断する。その判断の際には,あらかじめ設定された評価規準criterionおよび評価基準standardが用いられる。パフォーマンス評価は,評価を教育や学習の改善に生かしていくためには,測定に基づく従来の量的な把握のみでは限界があり,学習のプロセスや成果に対する質的な解釈が重視されるべきだとする1980年代後半からアメリカで広がった「教育評価方法のパラダイム転換」を背景として提唱された。また,環境との相互作用を通して学習者自身が認知過程を生み出すと考える構成主義的学習論を基盤とし,考えや表現,行為を作り出すプロセスが重視されている。

 パフォーマンス課題には,演技,発表といった実際の活動をはじめ,手続きの実行,状況や制約を想定したうえで問題解決を求める問題,概念地図や関連図の作成,問いを生成する活動,単語を次々と連想させる活動(ウェビング法)など多様な種類があるが,それらに共通する特徴としては,活動を通して学習者に表現を求める点,特定の知識や技能が含まれており活動のプロセスや成果を通してそれらが可視化される点などが挙げられる。とくに,人びとが現実社会で実際に直面する問題と同質,あるいは類似のパフォーマンス課題を用いる場合を,オーセンティック評価authentic assessmentという。

 パフォーマンス評価は,何がどの程度遂行されたかについての判断が可能となるように評価規準と評価基準が明確化された目標準拠評価であるという点において,単なる実技テストとは異なっている。その評価基準づくりの主な方法論として提唱されているのがルーブリックrubricである。ルーブリックとは,パフォーマンスの質を把握,判断するためのツールであり,一般に,質の水準を示す数段階程度の尺度とそれぞれの点数に対応するパフォーマンスを説明した記述語から構成される評価基準表を意味する。教育目標を具体的なパフォーマンスとして記述することで目標と評価の一体化を実現すること,教師などの評価者がパフォーマンスの質を的確に解釈する指針として活用することを通して形成的評価として機能し指導と評価の一体化に寄与すること,学習者にとっては学習目標が具体的に示されることで自己評価の効果的な促進につながり学習と評価の一体化に貢献することが期待されている。

 パフォーマンス評価では比較的長期にわたる学習活動を対象とすることもありうるが,その代表的な方法としてポートフォリオ評価portfolio assessmentが挙げられる。ここでいうポートフォリオとは,ある領域あるいは複数の領域における学習者の能力,努力,学習成果,成長を示す多様な成果物(作品,著作など)を意図的に集めたコレクションを指す。そこには絵,写真,作文,図表,自他からのコメント,録画録音テープなどが目的に応じて選択されて蓄積される。ポートフォリオ評価とはこのポートフォリオを学習や達成,成長を表わすエビデンスとしてとらえ,その質を把握し判断する方法である。自己評価,相互評価をも可能にするコミュニケーションのための評価ツール,また学習や成長を促す教育方法として位置づけることもできる。 →オーセンティック評価 →教育評価 →構成主義
〔鹿毛 雅治〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パフォーマンス評価」の意味・わかりやすい解説

パフォーマンス評価
パフォーマンスひょうか
performance evaluation

一定期間に運用されたポートフォリオやファンドの投資成果を測定し,評価すること。かつては,得られた投資収益の大きさのみで評価する方法が主流であったが,ポートフォリオ理論の発展により,投資収益だけでなく,その収益を得るために負担した投資リスクも考慮に入れて評価する方法が定着しつつある。投資リスクの大きさを調整した評価測度としては,シャープの測度,ジェンセンの測度,およびトレイナーの測度が有名である。これらの評価測度はいずれも,ポートフォリオ理論と資本資産価格モデルを利用する。

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