パラノイア(読み)ぱらのいあ(英語表記)paranoia

翻訳|paranoia

精選版 日本国語大辞典 「パラノイア」の意味・読み・例文・類語

パラノイア

〘名〙 (Paranoia) 精神病一つ患者が抱く妄想論理的には一貫しており、行動思考などの秩序が保たれているもの。偏執病妄想症
舞姫(1890)〈森鴎外〉「過劇なる心労にて急に起りし『パラノイア』といふ病なれば」

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デジタル大辞泉 「パラノイア」の意味・読み・例文・類語

パラノイア(paranoia)

内因性の精神病の一型。偏執的になり妄想がみられるが、その論理は一貫しており、行動・思考などの秩序が保たれているもの。妄想の内容には、血統・発明宗教嫉妬しっと・恋愛・心気などが含まれ、持続・発展する。偏執病。妄想症。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パラノイア」の意味・わかりやすい解説

パラノイア
ぱらのいあ
paranoia

偏執病、妄想症ともいわれ、頑固な妄想のみをもち続けている状態で、その際に妄想の点を除いた考え方や行動は首尾一貫しているものである。

 幻覚、とくに幻聴は伴わず、中年以降に徐々に発症し、男性に多い。妄想の内容は、高貴な出であると確信する血統妄想発明妄想、宗教妄想などの誇大的内容のものをはじめ、自分の地位・財産・生命を脅かされるという被害(迫害)妄想、連れ合いの不貞を確信する嫉妬(しっと)妄想、不利益を被ったと確信して権利の回復のための闘争を徹底的に行う好訴妄想、身体的な異常を確信している心気妄想などがある。一般には、自我感情が高揚して持続的な強さや刺激性を示している。

 パラノイアを独立疾患とみる立場と、統合失調症の一類型とみる立場、あるいは一定の素質と生活史や状況から理解できるという立場などがあって、今日なお一定した見解はない。

 なお、パラフレニーparaphreniaは妄想だけでなく幻覚も伴うもので、人格の崩れの比較的少ないものをいい、多くは統合失調症に含まれている。

[保崎秀夫]

『保崎秀夫著『幻覚』(1999・ライフサイエンス)』

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改訂新版 世界大百科事典 「パラノイア」の意味・わかりやすい解説

パラノイア
paranoia

精神障害のうち,体系的な妄想観念で終始する病態で,それゆえ〈妄想症〉と訳される(以前は〈偏執病〉の語も用いられた)。ただし,語源的には,パラpara(錯誤)+ヌースnous(精神)で,古代ギリシアでは狂気一般を指す言葉として用いられた。18世紀後半には体系的妄想を伴うすべての精神障害がパラノイアに含められたが,その後,概念はしだいに狭まって,クレペリンにいたり〈内的原因から発生し,思考,意志,行動の秩序と明晰さが完全に保たれたまま,徐々に発展する揺るぎない妄想体系〉と定義される。妄想の主題は血統,発明,宗教,好訴,恋愛,嫉妬,心気,迫害などで,40歳以後の,とくに男性に多いとされる。しかし,この規定にかなうケースは少なく,ガウプの観察した有名な〈教頭ワーグナー〉(1914)などがその典型として挙げられるが,それ以後,日本をふくめて世界的にほとんど報告例を見ない。それにもかかわらず,パラノイアはかつての人間的狂気の典型として今なお精神医学のなかで特異な輝きを失っていない。
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百科事典マイペディア 「パラノイア」の意味・わかりやすい解説

パラノイア

偏執病(へんしゅうびょう)ともいう。妄想(もうそう)を主徴とする精神病で,情動・意志面の障害は少ない。多様な定義があり,たとえばE.クレペリンは,内因性に発病し,慢性に発展する妄想体系を示し,それ以外の症状や人格変化を全くきたさない疾患であるとした。そのほか統合失調症精神分裂病)や躁鬱(そううつ)病との関係がいわれることもある。なお,偏執狂(モノマニア)は偏狂ともいい,一つの物事にだけ異常な執着を示す精神症状をいう。

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家庭医学館 「パラノイア」の解説

ぱらのいあ【パラノイア】

 強固で体系化した妄想(もうそう)が持続するものをいいます。
 妄想の内容は被害妄想(ひがいもうそう)、誇大妄想(こだいもうそう)、恋愛妄想(れんあいもうそう)(ある人から愛されているという妄想)などいろいろで、1つのテーマの妄想をもとにして、周囲の出来事をどんどんそれに関係づけていき、妄想が広がっていきます。妄想に基づいて、訴えをおこしたり、人とトラブルをおこすことも少なくありません。
 妄想以外では、話はまとまっており、人格(コラム「人格とは」)の水準もさほど低下しておらず、ふつうに生活や仕事をしている人がたくさんいます。統合失調症の妄想型の1つとも考えられますし、統合失調症とは別の病気であるという考え方もあります。

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