パルミラ(シリア)(読み)ぱるみら(英語表記)Palmyra

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パルミラ(シリア)」の意味・わかりやすい解説

パルミラ(シリア)
ぱるみら
Palmyra

シリア砂漠の中央にあるオアシス都市。現在シリアに属し、タドモルとよばれる。イスラエル王ソロモンは東方物資輸入の前線基地とした。紀元前1世紀ごろからシルク・ロード上の中継交易都市となり、ローマ帝国とパルティア帝国、続くササン朝ペルシア帝国との抗争に際してはローマ側の傘下に入って急速に発展した。3世紀後半に登場した女王ゼノビアはローマ帝国に独立を宣言したが、アウレリアヌス帝に攻略された。都市構造、政治形態、宗教、言語、美術を含む文化全般に、ギリシア、ローマ、ペルシア、エジプトなど東西文明の影響がみられる一方、シリアの伝統を継承するパルミラ独特の性格が認められる。遺跡の墓室から漢代の中国製絹織物が出土している。なお、パルミラの遺跡は1980年に世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)として登録されたが、内戦により甚大な被害を受けたとして、2013年には危機遺産リスト入りしている。

[小玉新次郎]

『小玉新次郎著『パルミラ』(1980・近藤出版社)』


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