パンタグラフ(読み)ぱんたぐらふ(英語表記)pantograph

翻訳|pantograph

精選版 日本国語大辞典 「パンタグラフ」の意味・読み・例文・類語

パンタグラフ

〘名〙 (pantograph)
① 製図用の写図器図形一定の比に拡大縮小するのに用いる。〔外来語辞典(1914)〕
電車電気機関車架線から電気を集電する装置一種車体屋根にとりつけた伸縮自在のひし形やL字形のわくの上部弓形の集電体が取りつけられている。〔電気工学ポケットブック(1928)〕
※砂の器(1961)〈松本清張〉「ようやくパンタグラフを上げて、エンジン始動の音を聞いたばかりである」

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デジタル大辞泉 「パンタグラフ」の意味・読み・例文・類語

パンタグラフ(pantograph)

電車などの屋根に取り付けた、架線から電気を取り入れるための装置。菱形で折り畳み式になっている。
図形を一定の比率で拡大または縮小するのに用いる、伸縮式の製図器。写図器。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パンタグラフ」の意味・わかりやすい解説

パンタグラフ
ぱんたぐらふ
pantograph

電気機関車や電動客車の屋根の上に取り付けて架空電車線(トロリー線)から電気エネルギーを接触集電する装置。本来の語源は四角形の関節接手をもつ棒尺からきたものである。四角形か菱形(ひしがた)の棒枠組みの頂部にカーボン、あるいは銅・鉄とグラファイトとの焼結合金でつくられた摺板(すりいた)sliderをもち、車体とは碍子(がいし)で絶縁する。アルミニウム軽合金またはステンレスの管で構成される伸縮自在の菱形枠組みは、巻ばねと作動軸の組合せによって押し上げられ、集電しないときには下降して折り畳み緊定(きんてい)する。作動方式によって、ばね上昇空気下降方式と空気上昇ばね下降方式の二つがある。摺板は、両端が弓状に曲がったアルミニウム製の集電舟(しゅうでんしゅう)の上にねじで止められている。トロリー線は直線区間でも摺板の局部摩耗が生じないようにジグザグに張られ、また曲線区間も保持構造物間単位の直線の連続なので、摺板と集電舟はそれに対応する幅をもっている。また、高速度で走行中にも安定して連続集電ができるように、集電舟を取り付ける菱形枠組み管頂部には安定用ばね装置が設けられ、50~80ニュートン程度の軽い接触圧力でトロリー線に接する。パンタグラフは、線路の構造上トロリー線の高さが変わっても自在に追随して集電が行える必要がある。したがって、異なった条件の線路に適応しなければならない在来線の車両ではある程度の大きさが要求される。新たに建設された新幹線ではトロリー線の高さにあまり変動がないので、小型・軽量のパンタグラフを採用することができた。

 最近は、菱形の半面だけの構造のZパンタグラフまたはシングルアームパンタグラフが採用されるようになった。JR西日本の500系新幹線電車は、集電舟をシリンダーで上下する集電装置を採用している。その他の集電装置としては、地下鉄など第三軌条方式に用いるコレクターシュー、路面電車などに使われるトロリーポール、ビューゲルがある。

[西尾源太郎]

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百科事典マイペディア 「パンタグラフ」の意味・わかりやすい解説

パンタグラフ

(1)図形を一定の比に拡大または縮小して描く製図器。平行クランク機構を一部にとり入れてある。(2)パンタグラフ集電器のこと。電車,電気機関車の屋根に設け,ひし形わくに集電舟を備えたもので,ばねまたは圧縮空気により上下自在に伸縮する。高電圧,大電流に適する。
→関連項目架線

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