ヒメグモ(読み)ひめぐも

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメグモ」の意味・わかりやすい解説

ヒメグモ
ひめぐも / 姫蜘蛛
[学] Theridion japonicum

節足動物門クモ形綱真正クモ目ヒメグモ科に属するクモ。ヒメグモは体長4~5ミリメートル、赤橙(せきとう)色で腹部に3黒点がある。山地の樹間に不規則網を張る。ときに木の葉で屋根をつくる。卵嚢(らんのう)は巻いた葉の中につくられていることが多い。日本全国に広く分布する。

 また、ヒメグモ科の総称として用いられ、とくに和名にヒメグモとつくクモをいう。この科は種類が多く、日本では80種余りが知られている。ヒメグモ類は一般に不規則網であるが、ある程度まとまった立体構造のものは籠網(かごあみ)とよばれる。また、籠網の下にシートをつくるものと、つくらないものがある。オオヒメグモは家屋内外にもっとも普通にみられる種で、汎(はん)世界的な分布をする。新築家屋にはたいていこのクモが真っ先に進入する。イソウロウグモ類には数種があって、造網性のクモの網に寄宿し、その網にかかった虫を襲い、ときには宿主をも襲う。ゴケグモは有毒グモとして有名である。コガネヒメグモは金色の美しいクモであるが、体に触れると金色がたちまち褐色に変わる。ツリガネヒメグモは崖地(がけち)のくぼみにすみ、砂粒で鐘状の住居をつくる。

[八木沼健夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「ヒメグモ」の意味・わかりやすい解説

ヒメグモ (姫蜘蛛)
Theridion japonicum

クモ目ヒメグモ科の蛛形(ちゆけい)類。日本全国および近隣諸国に分布している。雌は体長4mm前後,前体部は橙色,後体部は球形で橙色の地に白色斑,黒色の点状斑がある。雄は体長2mmあまりで雌よりも黒色みが強い。地上1~2mの樹枝間にさしわたし20cmほどのシート状の網を水平に張り,その上部にも糸を不規則に張りめぐらす。ヒメグモは,このシート状の網の上の不規則網の中に木の葉をつるして住居および産室とするが,若い個体では葉をつるさないものも多い。小昆虫がシート網の上に落ちると,クモもシート網に落下しすぐに網の下面にまわり込んで下から獲物に粘糸を投げつける。第4歩脚糸疣(しゆう)から粘糸を繰り出して獲物に投げかける行動は,ヒメグモ科のクモに共通のものである。獲物は住居にもち帰ってから食べる。秋,住居内で産卵する。子グモは卵囊から出ると,しばらく母グモといっしょにおり,母グモのとらえた獲物を食べることがある。本科のクモは世界で2000種ほどが,また日本では100種あまりが知られている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒメグモ」の意味・わかりやすい解説

ヒメグモ
Achaearanea japonica

クモ綱クモ目ヒメグモ科。体長 5mm。橙赤色の丸いクモで,腹部に通常3個の黒色斑がある。歩脚の先方は黒ずんでいる。北海道,本州四国,九州の市街地から山地にごく普通で,木の枝の間にシートのついた不規則な網を張り,木の葉で屋根をつける。なおヒメグモ科 Theridiidaeは立体的な不規則網を張る種が多く,日本産は約 100種が知られている。 (→クモ類 )

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世界大百科事典(旧版)内のヒメグモの言及

【クモ(蜘蛛)】より

…しかし網を張らないナガイボグモ科,ササグモ科もこれに含まれる。日本にはヒメグモ科,ホラヒメグモ科,サラグモ科,センショウグモ科,ヨリメグモ科,コガネグモ科,カラカラグモ科,アシナガグモ科,ナガイボグモ科,ヒラタグモ科,ホウシグモ科,ウシオグモ科,ミズグモ科,タナグモ科,ハタケグモ科,キシダグモ科,コモリグモ科,ササグモ科など21科がいる。二爪類Dionychaは2個のつめをもつクモで,毛束のあるものが多い。…

※「ヒメグモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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