ヒヨケムシ(読み)ひよけむし

改訂新版 世界大百科事典 「ヒヨケムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒヨケムシ (避日虫)
sun spider
wind scorpion

蛛形(ちゆけい)綱ヒヨケムシ目Solpugidaに属する節足動物の総称。生息地はおもに熱帯亜熱帯地域で,日本にはいない。約700種が知られており,その多くが夜行性のためヒヨケムシの名があるが,なかには昼間ひなたを徘徊する種類もいる。体長1~7cmの大型の蛛形類で,鋏角(きようかく)がすこぶる大きく,またそれを支えている前背板も強く隆起して大きい。触肢は歩脚と同大あるいはそれよりも長大で,先端は丸くなり歩行時には前方に突き出してさぐり歩く。第1歩脚も触肢とともに触覚器官として働き歩行には用いられず,先端のつめは小さくなり,なかにはないものもいる。第2~第4歩脚が歩行に用いられ,第4歩脚基節と転節の下面にはこの類特有の感覚器官と考えられるラケット器官が3~5対存在する。昆虫,クモサソリ,トカゲなどを捕食し,ときにはネズミ,小鳥なども殺すことがある。このグループは毒腺をもたないが,これにかまれて皮膚をえぐりとられたり,傷口からの二次感染によってときには重傷となる。石炭紀から本類の化石が知られている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒヨケムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒヨケムシ
ひよけむし / 日避虫

節足動物門クモ形綱避日(ひび)目Solifugaeの陸生動物の総称。大形のクモ形類で、体は毛深く、一様に黄色ないし褐色であるが黒色のものもある。体長は最大68センチメートルに達する。雄は雌より小形であるが、脚(あし)は比較的長い。前体背面の前が膨れた大きくて堅い背板に覆われ、密接した1対の中央眼と痕跡(こんせき)的な1ないし2対の側眼がある。鋏角(きょうかく)はよく発達し、頭部と同じくらい強大なあごとなり、その鋏(はさみ)で獲物を殺す。触手は6節で末端につめがなく、特別な吸盤状の感覚器官となる。第1脚は鞭(べん)状感覚器官のようで、残りの脚が歩脚の用をなしている。第4歩脚は強大で、その基部下面に特徴的な5個のラケット状器官があり、これは生殖に関係のある感覚器と考えられる。夜行性のものと昼間活動するものとがあり、肉食で極度に貪食(どんしょく)である。毒腺(どくせん)はないが人間に対するこの類の咬傷害(こうしょうがい)はひどい。熱帯から亜熱帯に産し、とくに砂漠に多い。ヒヨケムシ類は10科に属する約700種が知られるが、日本には生息していない。

[森川国康]

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