ビルタネン

化学辞典 第2版 「ビルタネン」の解説

ビルタネン
ビルタネン
Virtanen, Artturi Ilmari

フィンランド生化学者.ヘルシンキに生まれる.ヘルシンキ大学化学生物学物理学学び,1919年D.Sc.を取得.同年フィンランド酪農協同組合ヴァリオ研究所所員.1921年同所長.1931年ヘルシンキ生化学研究所所長になり,終身その職にあった.1924年ヘルシンキ大学化学講師.1931年フィンランド工科大学生化学教授.1939年ヘルシンキ大学教授.発酵窒素代謝を研究し,また多数のビタミン類やアミノ酸を発見し,それらの研究を実地農業に応用することに努めた.マメ科の根粒バクテリアによる窒素固定機構を研究し,また,サイロに貯蔵された緑草飼料の発酵過程を明らかにして,これを酸性に保つことにより変質を防ぐ方法(AIV法)を開発した.これは,冬季乳牛に高タンパク質飼料を供給する貯蔵法として,北欧の酪農に貢献した.この業績により,1945年ノーベル化学賞を受賞.この評価について,当時から北欧以外の科学者から疑念が提起されており,1940年のソビエト-フィンランド戦争で,スウェーデンがフィンランドを助けなかった外交的代償だったという説がある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ビルタネン」の意味・わかりやすい解説

ビルタネン
Artturi Ilmari Virtanen
生没年:1895-1973

フィンランドの生化学者。生化学とりわけ人間の栄養と農業に関する研究で1945年度ノーベル化学賞を受賞した。ヘルシンキに生まれる。1919年ヘルシンキ大学で化学,生物学,物理学を学んだ後,チューリヒ,ストックホルムで生化学の基礎研究を続けた。24年から39年までヘルシンキ大学の化学講師,31年より39年までフィンランド技術研究所の生化学教授を兼任,39年より48年までヘルシンキ大学の生化学教授を務める。異なったバクテリア発酵のメカニズムをはじめ,緑色植物の酵素形成や,動物の窒素代謝のメカニズムの研究などを進めた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビルタネン」の意味・わかりやすい解説

ビルタネン
Virtanen, Artturi Ilmari

[生]1895.1.15. ヘルシンキ
[没]1973.11.11. ヘルシンキ
フィンランドの生化学者。ヘルシンキ,チューリヒ,ミュンスターおよびストックホルムの各大学に学び,ヘルシンキ大学講師 (1924) ,フィンランド工科大学生化学教授 (31) を経てヘルシンキ大学教授 (39) 。農芸化学,栄養化学を専門とし,植物の窒素固定,窒素をはじめとする物質代謝の研究にすぐれた業績を上げた。特に蛋白質の豊富な家畜飼料の品種改良と保存法の開発により,1945年ノーベル化学賞を受賞した。

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百科事典マイペディア 「ビルタネン」の意味・わかりやすい解説

ビルタネン

フィンランドの生化学者。1939年以降ヘルシンキ大学教授および生化学研究所長。まぐさの新しい貯蔵法を発見し,また根粒バクテリアの窒素固定の化学的機構を解明。農業化学および栄養化学における貢献に対して1945年ノーベル化学賞。

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世界大百科事典(旧版)内のビルタネンの言及

【フィンランド】より

…フィンランド数学は関数理論で世界のトップレベルにある。生化学のビルタネンはノーベル化学賞を受けた。またユルッポArvo Ylppö(1887‐1992)は小児科および未熟児の研究で先駆的仕事をしている。…

※「ビルタネン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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