ビロビジャン(英語表記)Birobidzhan

デジタル大辞泉 「ビロビジャン」の意味・読み・例文・類語

ビロビジャン(Birobidzhan/Биробиджан)

ロシア連邦南東部、ハバロフスク地方ユダヤ人自治州の都市。同州の州都ハバロフスクの西約150キロメートル、アムール川支流ビラ川沿いに位置する。1928年、スターリンユダヤ人集団移住計画によって建設されたが、1989年からのユダヤ人のイスラエル移住に伴い、現在のユダヤ人の人口の割合は5パーセント以下。市内にはシナゴーグユダヤ教に関する博物館がある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ビロビジャン」の意味・わかりやすい解説

ビロビジャン
Birobidzhan

ロシア連邦東端,ハバロフスクの西方175kmにある都市。人口8万6700(1992)。ロシア連邦のユダヤ人自治州の州都で,この都市名をもって同自治州そのものを指すことが多い。同自治州の人口は22万0200(1991。うちユダヤ人は4%前後),面積3万6000km2。アムール川によって中国と国境を接している。ユダヤ人自治州が成立したのは1934年。1928年までユダヤ人がまったく居住していなかったこの地域がユダヤ人自治州と定められたのには,いくつかの要因がある。

 古くからロシアのユダヤ人はツァーリ政府の規制措置をうけて,その大部分が西部や南西部の都市に集中し,商人,職人を生業とする者が多かった。農業入植地への移民によってユダヤ人社会の構造を変え,ユダヤ人問題の解消をはかろうとする運動はロシア革命前からあったが,革命後,入植先の領域を具体的に選定するに至った。当初はクリミア半島の一部が候補に上ったが,1927年までにこの計画は挫折し,代わってビロビジャンが有力視された。その直接の契機満州事変に見られる東からの脅威に備える国防的配慮であり,第2次五ヵ年計画終了時までに総人口30万,ユダヤ人人口15万とする植民強化が見込まれた。しかし実際にはその実現にほど遠く,同自治州のユダヤ人人口は1948年の3万をピーク以後かえって減少し,1970年の1万1452(当時のソ連国内のユダヤ人総人口約215万1000のうちの0.5%でしかない)から,89年には8887となった。91年のソ連邦崩壊後もロシア連邦の唯一の自治州とされているが,モスクワなどの大都市や国外に移住するユダヤ人が多いといわれる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ビロビジャン」の意味・わかりやすい解説

ビロビジャン

ロシア東端,ハバロフスクの西方175kmにある都市。ユダヤ自治州の州都(人口約8万4000人,1989)で,その代名詞ともなる。自治州は面積3万6000km2,人口21万人余(1989)だが,ユダヤ人はその4%強。アムール川で中国と国境を接する。農業入植によるユダヤ人社会の構造変化,東方からの脅威への国防的配慮などから,満州国建国(1932年)の直後1934年にカリーニンらの主導により自治州が設けられたが,ユダヤ人人口は1948年の3万人をピークに減少しつづけている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビロビジャン」の意味・わかりやすい解説

ビロビジャン
びろびじゃん
Биробиджан/Birobidzhan

ロシア連邦東部、ハバロフスク地方ユダヤ人自治州の州都。アムール川の支流ビラ川河畔にあり、シベリア鉄道に沿ってハバロフスクの西方175キロメートルの地点に位置する。人口7万7000(2003推計)。機械製造(農業機械、変圧器)、メリヤス、縫製、履き物、木工、食料品などの工業がある。1928年に小駅として設立され、以後発達して37年に市となった。名称はビラ川とビジャン川にちなむ。

[三上正利]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビロビジャン」の意味・わかりやすい解説

ビロビジャン
Birobidzhan

ロシア南東部,エブレイ自治州の州都。ハバロフスクの西北西約 170km,アムール川支流ビラ川沿岸にあり,シベリア横断鉄道に沿う。 1928年鉄道駅チホンカヤがつくられ,ユダヤ人が入植。 31年ビロビジャンに改称。 34年エブレイ (ユダヤ人) 自治州設立とともにその行政中心地となり,37年市となった。当初,縫製,メリヤス,製靴,フェルト (長靴用) などの工業が発達したが,1960年代に農業機械工場や変圧器工場がつくられ,ほかに食品 (食肉,ビール,乳製品) ,製材,家具などの工場が立地する。郷土博物館,民族劇場などの文化施設がある。人口8万 6300 (1991推計) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android