ピュアカンパニー化(読み)ぴゅあかんぱにーか(英語表記)Pure Company

知恵蔵 「ピュアカンパニー化」の解説

ピュアカンパニー化

もともと企業は、規模の拡大に伴い調達、生産、販売といった機能活動を企業の境界内に分化・統合し、1つの事業に限定された専業企業の形態をとっていた。ピュアカンパニー化とは、膨張し、複雑化した多角化企業で生じていたアナジー(相互マイナス効果)を解消するため、もとの姿である専業企業に戻そうとする動きである。多角化企業への道は、内部成長方式(内部経営資源の再配分)や外部成長方式(M&A)などによる規模の拡大、事業の多様化などの進展によって実現される。ところが、多角化が意図したシナジー効果の確保はおろか、アナジーが発生するという状況が目立つようになってきている。行き過ぎた多角化によって、状況は一変した。まず規模拡大による「規模の経済」、次いで事業多様化を通じた相互補完効果による「範囲の経済」が、こうした企業でのシナジー効果をもたらすと考えられた。川上川下といった垂直統合は取引コストとの関連で進められたはずなのに、結果として長く垂直的に延長されたバリューチェーン(価値連鎖)を企業の境界内に持ち込むこととなった。また、多角化の拡大が利益を生み出せない事業も抱え込むことで、総合力に勝るはずの多角化企業の業績は次第に低落一途をたどることとなり、近年多角化経営のほころびが隠し切れなくなった。 こうした事態に直面し、総合化によるシナジーの追求ではなく、総合化とは逆の方向に経営のかじを転換させることでアナジーの解消を狙った動きが注目されている。すなわち、これまで多様化と規模拡大で膨張し続けてきた総合企業である大規模多角化企業を競争力のある事業、コア事業に絞り込んでメリハリのある事業構造に組み替えると同時にバリュー・チェーンの短縮化、単純化を図るべく、不振事業からの撤退やピュアカンパニー化が一挙に進んだ。

(高橋宏幸 中央大学教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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