ファージンゲール(英語表記)farthingale

翻訳|farthingale

改訂新版 世界大百科事典 「ファージンゲール」の意味・わかりやすい解説

ファージンゲール
farthingale

15世紀末のスペイン宮廷モードに由来し,婦人服のスカートを広げるために用いられた枠つきのペティコート。フランスやイギリスの貴族社会には16世紀に導入され,フランスでは〈ベルチュガダンvertugadin〉と呼ばれた。その構成は,のりづけした麻布トウ(籐)やシュロなどの茎,鯨ひげ,針金などを数段水平にとりつけ,外形を鐘状や円錐状に形づくったものである。麻布のほかに薄地の毛織物,絹,タフタビロードなども用いられ,裏つきのものもあった。16世紀の後半には,スペインの円錐形をはじめ,フランスの太鼓形,イギリスの車輪形のように,それぞれの国のファッションをあらわすファージンゲールが出現している。以来,スカートを広げるためのペティコートとして,18世紀にパニエ,19世紀にクリノリンバッスルが生まれることとなった。
スカート
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ファージンゲール」の意味・わかりやすい解説

ファージンゲール
farthingale

おもに 16世紀のヨーロッパで女性がスカートを広げるために着用した腰枠形式のペティコートの1種。 15世紀末のスペイン宮廷モードに登場し,イギリスやフランスに伝播した。初め若い枝でつくられていたと考えられており,名称はスペイン語で若枝を意味するベルデュゴ verdugoに由来し,フランスではベルチュガダン vertugadinと呼ばれた。外形は釣鐘形や逆じょうご形で,トウ (籐) ,くじらひげ,針金などを輪にして何段にも重ね,その上に麻布を張ってつくる。スペインではもっぱら円錐形であったが,イギリスでは車輪形の腰あてを使い外形が太鼓形を呈するものも好まれた。 (→パニエ )

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世界大百科事典(旧版)内のファージンゲールの言及

【スカート】より

…17世紀前半のスペイン風モードは,固くのりづけした麻布に鯨のひげを入れたペティコートで釣鐘形にした。このペティコートはファージンゲールと呼ばれた。続くロココ・スタイルのスカートは柳の木などでつくられた腰枠(パニエpanier)を入れて横に広く張り出し,あたかもカニが歩いているようであったという。…

※「ファージンゲール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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