フィブリン(読み)ふぃぶりん(英語表記)fibrin

翻訳|fibrin

デジタル大辞泉 「フィブリン」の意味・読み・例文・類語

フィブリン(fibrin)

血液を凝固させる作用をもつたんぱく質出血に際し、血漿けっしょう中のフィブリノゲントロンビンが作用してできる不溶性の線維状のもの。出血口を網状に覆い、血球を絡めて凝固する。線維素

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精選版 日本国語大辞典 「フィブリン」の意味・読み・例文・類語

フィブリン

〘名〙 (fibrin Fibrin) 血液凝固に重要な役を果たす蛋白質血漿中に存在するフィブリノーゲンがトロンビンの作用によって固体になったもの。無色あるいは淡黄色の水に不溶の固体でこれが傷口を覆って出血が止まる。繊維素

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィブリン」の意味・わかりやすい解説

フィブリン
ふぃぶりん
fibrin

繊維素(線維素)ともいう。血液凝固において、血漿(けっしょう)中の血液凝固第Ⅰ因子であるフィブリノゲン(Aα(アルファ)・Bβ(ベータ)・γ(ガンマ))2にトロンビンが作用してフィブリノペプチドAおよびBのそれぞれアルギニンArg16-グリシンGly17(Aα)とArg14-Gly15(Bβ)を切り離した残りが難溶性のフィブリンモノマー(αβγ)2である。これがさらに凝固因子ⅩⅢaであるトランスグルタミナーゼの作用によってγ-γ間、次にα-α間にイソペプチド架橋ができ、不溶性のフィブリンポリマーとなり、網状になって血球を絡め、凝血塊となる。α鎖ではフィブロネクチンやα2-プラスミンインヒビターもⅩⅢaによって架橋される。血球を除いた海綿状フィブリンは外科手術の際、止血用や切除部分の充填(じゅうてん)用に使われる。フィブリンは、血清中のセリンプロテアーゼの一つであるプラスミンによって徐々に分解される。

[野村晃司]

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改訂新版 世界大百科事典 「フィブリン」の意味・わかりやすい解説

フィブリン
fibrin

硬タンパク質の一種で,血液凝固の際に弾力性のある繊維状重合体となり,血球にからみつき血餅を生じさせる。繊維素とも呼ばれ,そのアミノ酸配列は決定されている。フィブリノーゲンにタンパク質分解酵素トロンビンが作用してフィブリノペプチドAおよびBが遊離され,フィブリンが生じる。血漿(けつしよう)中ではさらに他の血液凝固因子の作用によりフィブリン分子間に架橋が形成され,繊維状重合体が安定化される。血漿からつくった海綿状のフィブリンは,手術による切除部位の充てん用に利用される。
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化学辞典 第2版 「フィブリン」の解説

フィブリン
フィブリン
fibrin

フィブリノーゲン-フィブリン変換過程は血液凝固反応の重要な過程であり,酵素トロンビンによって反応は進行する.フィブリノーゲンはα,β,γ鎖各2本ずつの計6本のポリペプチド鎖で構成されているが,トロンビンの加水分解触媒作用によって,αおよびβ鎖のN末端付近に存在する-Arg-Gly-結合を切断し,4本のペプチドをフィブリノーゲン分子より遊離する.残りの部分をフィブリンというが,重合しやすくフィブリン重合体を生成する.血液凝固過程ではさらにフィブリン安定化因子が作用し,尿素あるいはモノクロロ酢酸に対し,不溶性のフィブリン塊を形成する.人工的につくられたフィブリン塊あるいは膜は医療材料として使用されるほか,写真,皮革工業に利用される.

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百科事典マイペディア 「フィブリン」の意味・わかりやすい解説

フィブリン

繊維素とも。硬タンパク質の一種。無色または帯黄色,繊維状無定形の弾性のある固体。フィブリノーゲンにトロンビンが作用して生じ,血漿中で他の血液凝固因子の作用によって繊維状に重合して血液凝固を起こす。血漿から作ったフィブリンは,止血用のフィブリン泡(ほう)や,硬脳膜代用のフィブリン膜として医療に用いられる。
→関連項目目やに

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィブリン」の意味・わかりやすい解説

フィブリン
fibrin

線維素。血液凝固の際,血漿中のフィブリノーゲンがトロンビンの作用で分解され,重合してできる不溶性蛋白質。凝血の中では網状につながって赤血球や白血球を包んでいる。採血直後の血液を棒でかき回し,からまって出てきたものを水洗すれば,塊状のフィブリンが得られる。血漿から取出した海綿状フィブリンを手術痕の充填物として使うことがある。

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栄養・生化学辞典 「フィブリン」の解説

フィブリン

 血液に含まれるタンパク質で,血液凝固において中心的な役割を果たす.血液凝固の際,フィブリノーゲンが部分加水分解されてフィブリンとなり,網目状の組織を作って破れた血管の蓋の役割をする.

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世界大百科事典(旧版)内のフィブリンの言及

【血液】より

…血管が破れて内皮細胞の下にある膠原(こうげん)繊維や周囲の組織が露出すると,まず血小板が付着し,つぎつぎと集合して血小板塊をつくり血管の破れた部位に栓をする。続いて血漿の中にある凝固因子(12種類)が膠原繊維との接触や組織液の混入により活性化されて連鎖反応をおこし,最終的には可溶性のフィブリノーゲンが不溶性のフィブリン(繊維素)となって網目構造が形成され,強固な血液凝集塊(血栓)をつくって出血を止める。しばらくして内皮細胞が再生し血管壁の修復が完了すると,血漿に含まれている繊維素溶解物質が活性化され,役割を終えた血栓を溶かし(繊維素溶解),血液の流れが正常状態に戻る。…

【血液凝固】より

…II,VII,IX,Xの4因子は,ビタミンKを必要とする酵素系によって,肝臓細胞で産生される(これをビタミンK依存性凝固因子という)。
[血液凝固のしくみ]
 血液凝固機序は,これら一連のタンパク質分解酵素の活性化の連鎖反応から成立しており,最終的に繊維状の安定したフィブリン網が析出して,血液がゲル化することによって終了する。連鎖反応の各段階を経るごとに反応は増幅され,わずかな凝固開始の刺激も血液凝固を完了させるように働く機構になっている。…

※「フィブリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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