フィロデンドロン(英語表記)Philodendron

デジタル大辞泉 「フィロデンドロン」の意味・読み・例文・類語

フィロデンドロン(〈ラテン〉Philodendron)

サトイモ科観葉植物多くつる性で、鉢植えにする。

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改訂新版 世界大百科事典 「フィロデンドロン」の意味・わかりやすい解説

フィロデンドロン
Philodendron

サトイモ科フィロデンドロン属Philodendron総称。熱帯アメリカに200種以上がある。多年草樹木によじのぼるつる性種が多いが,茎が直立する種もある。茎は古くなると半木質化する。幼苗期と成熟期の葉では形態の変化する種類も多い。頑健で生育が速く,耐陰性もあるので,多くの種が温室や室内観葉植物としても栽培され,普通は幼苗期を観賞する。フィロデンドロン・ビペンニフォリウムP.bipennifolium Schottはつる性で,葉は鈍光沢のある暗灰緑色で,バイオリン形をしている。葉柄がやや長いが,強健で生長が速く,中鉢~大鉢の観葉種として普及している。市場ではパンドラの通称で呼ばれる。フィロデンドロン・スカンデンス・オキシカルジウムP.scandensK.Koch et Sello ssp.oxycardium(Schott)Buntingはメキシコ原産のつる性種で,細い茎に長ハート形の葉を密生する。鈍光沢のある暗緑色で,先は細くとがる。長さ10~15cmで小さく,ヒメカズラの名があり,ヘゴ付けにして小鉢~大鉢に作るほか,つり鉢にも向く。淡黄白色の斑(ふ)が入る園芸品種もあるが,斑が不安定で,不鮮明なため普及していない。フィロデンドロン・グッティフェルムP.guttiferum Kunthは小型のつる性種で,葉は長さ15~20cm,長楕円形,暗緑色で,葉柄は多肉質鞘(さや)状となる。小鉢のヘゴ付けに向く。ハネカズラとも呼ばれる。白色斑の入る園芸品種cv.Variegataもある。フィロデンドロン・マルティアヌムP.martianum Engl.は本来つる性だが,観賞用にはロゼット状のものが利用される。葉柄が太くふくらむので,ホテイカズラの名がある。

 フィロデンドロン属は高温多湿を好むが,日照不足にも強く,室内装飾に適している。挿木で繁殖でき,生長も速いので,生産も多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィロデンドロン」の意味・わかりやすい解説

フィロデンドロン
ふぃろでんどろん
[学] Philodendron

サトイモ科(APG分類:サトイモ科)の不耐寒性つる植物。熱帯アメリカ、西インド諸島に約500種が分布し、うち数十種が観葉植物として利用される。花は単生し、花被(かひ)はなく、肉穂花序には付属体がつかない。子房は多室で葉に平行脈がある。高温多湿でよく育ち、強光を嫌う。節から気根を出し、他物によじ登るので、ヘゴ材などを支柱として仕立てる。葉の形や色彩の変化に富み、美しいものが多く、次の各種がよく栽培される。

 ビロードカズラP. andreanum Devans.はコロンビア原産の美葉種。葉は長さ50センチメートルの楕円(だえん)状心臓形。若葉は淡黄緑から銅緑色でビロード光沢がある。成葉は暗緑色で、老化すると光沢を失う。ハゴロモカズラP. imbe Schottはブラジル原産の大形種。葉は肉厚で長さ40~60センチメートルの長卵形で、基部は矢じり形、表面は暗緑色、裏面は淡黄緑色。変種に白斑(しろふ)入りのワリエガートゥムがある。ヒメビロードカズラP. micans Schottはドミニカ、コロンビア原産のやや小形種。葉は長さ15~30センチメートルで長心臓形。表面はビロード光沢のある暗緑褐色で、中央脈は銀緑色。裏面は淡黄色か淡紅色で、若い茎は細くて赤い。ヒメカズラP. oxycardium Schottは中央アメリカ原産のやや小形種。葉は約20センチメートルの卵状心臓形、やや肉厚で緑色。変種のフイリヒメカズラは、葉の全面に不鮮明な乳白色のまだら斑が入る。ヒトデカズラP. selloum K.Kochはブラジル、パラグアイ原産。葉は長さ90センチメートル、卵形で羽状に全裂する。上部の裂片はさらに羽状に浅裂し、濃緑色で、つるはほとんど出ない。シロガネカズラP. sodiroi hort.はブラジル原産の小形種。葉は約35センチメートルの広心臓形で、葉脈がへこみ、全体に波打つ。緑色地に銀緑色の斑が入って美しい。また、新芽の包葉と葉裏の主脈と葉柄の基部は、紅褐色となり美しい。

[植村猶行 2022年1月21日]


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百科事典マイペディア 「フィロデンドロン」の意味・わかりやすい解説

フィロデンドロン

熱帯アメリカ原産のサトイモ科の一属で,200種以上ある。姿,葉形に特異なものが多く,第2次大戦後,多数の種が輸入され,室内の観葉植物として栽培が盛んになった。花はいずれも仏炎包に包まれた肉穂花序。一般に高温多湿を好み,多くはつる性で他物にからまってはい伸びる。切ったつるをさしてふやす。交雑種も多い。世界各地の植物園などで栽培されるほか,以下のような種類が鉢植室内観葉植物として利用されている。フィロデンドロン・セロウム(ヒトデカズラ)は広心臓形の大型の葉が羽状に全裂,裂片はさらに羽裂する。茎の葉が落ちた跡の模様が面白い。フィロデンドロン・ラシニアタム(ヤッコカズラ)は葉が3裂し,葉肉厚く革質。フィロデンドロン・スカンデンスの亜種オキシカルジウム(ヒメカズラ)は,上面が濃緑色で下面が黄緑色になり,小型の心臓形葉をもつ。これには斑入(ふいり)品や,上面も黄緑色になる園芸品種もある。このほか,和名でセンニンカズラと呼ばれる,光沢のあるバイオリン形の葉をもつもの,ヒメカズラに似てレモン黄色の葉をもつ〈レモンライム〉,あるいはヤッコカズラに似た〈フロリダ〉と呼ばれる来歴不詳の園芸品種など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィロデンドロン」の意味・わかりやすい解説

フィロデンドロン
Philodendron

サトイモ科の属名で熱帯アメリカに 200種以上も知られているが,通常は観葉植物として栽培される数種の園芸名として呼ばれている。多くはつるあるいは半つる状であるが,直立性のものもある。つる性の代表的なものにビロードカズラ P. andreanum,ヒメカズラ P. oxycardiumなどがあり,直立性のものにはヒトデカズラ P. selloumなどがある。

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