フウセンウナギ(読み)ふうせんうなぎ(英語表記)Swallower eel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フウセンウナギ」の意味・わかりやすい解説

フウセンウナギ
ふうせんうなぎ / 風船鰻
Swallower eel
whiptail gulper
[学] Saccopharynx schmidti

硬骨魚綱ウナギ目フウセンウナギ科の海水魚。本科はフクロウナギ科、ヤバネウナギ科およびタンガクウナギ科とともに、ウナギ目とは別目のフウセンウナギ目とする研究者もいる。フウセンウナギ目に共通する特徴として、鰓蓋(さいがい)諸骨(えらぶたを構成する骨)、鰓条骨、鱗(うろこ)、腹びれ肋骨(ろっこつ)、うきぶくろなどがないこと、尾びれはないかあっても退化的であること、鰓孔(さいこう)は腹部にあること、上下両顎(りょうがく)や舌顎骨(ぜつがくこつ)がきわめて長く伸長し、頭蓋骨と1か所で関節すること、レプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)期を経て成長し、その体高が高く、各筋節がW形ではなくてV形であること、などがあげられる。

 フウセンウナギ科の特徴は、口が著しく大きいこと、鰓孔がきわめて小さく、肛門(こうもん)よりも吻端(ふんたん)のより近くに開口すること、胸びれがよく発達すること、頭蓋床の鋤骨(じょこつ)(最前端にある骨)と副蝶形骨(ふくちょうけいこつ)(鋤骨の直後の骨)がないこと、脊椎骨(せきついこつ)数が150~300であることなどである。

 本種は南太平洋からインド洋に分布する。日本近海からは採捕された報告はまだないが、とれる可能性は非常に高い。体はきわめて伸長し、後方に向かってだんだん細長く、後部では紐(ひも)状になる。尾端がわずかに広がって尾器官になる。腹部は明らかに尾部より高く、拡張させることができる。肛門は全長の前3分の1~5分の1付近に開口する。目は著しく小さくて、吻端近くにある。吻は短く、突出する。口は目のはるかに後方まで開く。歯は細くて、後方に曲がり、3~4列になる。背びれは肛門のすこし前から、臀(しり)びれは肛門の直後から始まり、尾端近く達する。尾びれはない。側線孔はないが、一連の乳頭状の突起をもっている。体は一様に黒い。水深1000~3000メートルの深海にすみ、おもに魚類を食べる。大きな口と拡張できる腹部は大形の魚類を飲み込むことができる。尾器官は発光してルアーとして働くと推測されている。雄は成熟するとあごなどの摂餌(せつじ)器官が退化し、目や嗅覚(きゅうかく)器官が発達することが知られている。全長約2メートルになる。本科に世界の深海から約10種が知られている。

[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「フウセンウナギ」の意味・わかりやすい解説

フウセンウナギ (風船鰻)
gulper eel
swallower
Saccopharynx schmidti

フウセンウナギ目フウセンウナギ科の深海魚。体型はウナギ形だが,体の前半は後半部に比べ太い。口は大きく裂け,両あごの歯は鋭く内側に反っており,おもに魚類を捕食する。微小な眼が上あごの先端にあり,1mを超える個体でも眼径は3mm程度である。尾びれは紐状に長くのびその先端に発光器をもつ。背びれとしりびれは体の中央付近より尾びれの基底部まで体長のほぼ半分を占める。体表にうろこはなく,化骨の進んでいない骨格をもつ。体は黒色で柔軟である。体長1.8mに達する。日本近海からは未報告であるが,南太平洋からオーストラリア東部にかけての800m以深の深海から採集されている。フウセンウナギ科Saccopharyngidaeの魚類は全世界で4種が知られているが,その総採集個体数は20個体に満たないといわれる。また近縁の科にフクロウナギ科があり,口部の形態がペリカンの口のようで,背びれが頭部から始まっている点が異なる。日本近海からフクロウナギEurypharynx pelecanoidesが知られ,別名ペリカンウナギモドキと呼ばれる。
深海魚
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フウセンウナギ」の意味・わかりやすい解説

フウセンウナギ

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