フェナントロリン

化学辞典 第2版 「フェナントロリン」の解説

フェナントロリン
フェナントロリン
phenanthroline

C12H8N2(180.20).フェナントレンの二つのCHをNで置換した化合物で,3種類の異性体が存在する.【】1,7-フェナントロリン:m-フェニレンジアミンまたは7-アミノキノリンとグリセリンを用いるスクラウプ合成により生成する.2分子の結晶水を含む針状晶.融点65.5 ℃.無水物は融点78~78.5 ℃.熱水エタノール,希無機酸に可溶,エーテル,ベンゼンリグロインに不溶.塩酸塩,ピクラートなどの誘導体ができる.【】1,10-フェナントロリン:o-フェニレンジアミンまたは8-アミノキノリンのスクラウプ合成により生成する.1分子の結晶水を含む白色の結晶.融点93~94 ℃.無水物は融点117 ℃.水,ベンゼン,アルコール類,アセトンに可溶,石油エーテルに不溶.鉄,銅,コバルトニッケルなどと二座配位子としてキレートをつくる.鉄(Ⅱ)とは赤色錯塩 [Fe(C12H8N2)3]2+ をつくり,過マンガン酸塩滴定,セリウム(Ⅳ)滴定において酸化還元指示薬として用いられる.鉄(Ⅲ)錯塩は淡青色を呈する.【】4,7-フェナントロリン:p-フェニレンジアミンまたは6-アミノキノリンのスクラウプ合成により生成する.針状晶.100 ℃ で結晶水を失う.融点173 ℃.エタノール,クロロホルムに易溶,熱水に可溶,エーテル,ベンゼン,二硫化炭素に難溶.エタノール溶液に鉄(Ⅲ)を加えると赤黄色を呈する.塩酸塩,ピクラートなどの誘導体ができる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「フェナントロリン」の意味・わかりやすい解説

フェナントロリン
phenanthroline


正式名は1,10-オルトフェナントロリン。ニトロベンゼン硫酸の共存下,o-フェニレンジアミンとグリセリンの縮合で得られる。融点114~117℃。真空中で昇華すると単斜晶系の結晶となり,分子どうしは層状構造をとる。水から再結晶すると1分子の水を含み,融点93~94℃の白色結晶を与える。300倍の水,70倍のベンゼンに可溶で,アルコール,アセトンにはさらに容易に溶ける。多くの遷移金属イオンと美しい色の錯塩をつくり,とくに銅(Ⅰ),鉄(Ⅱ)の比色定量試薬として使われる。1.0mol硫酸水溶液中でのFeL32⁺⇄FeL33⁺の標準酸化還元電位は1.06Vで,赤橙色⇄ほとんど無色の変化をする。この変化は硫酸セリウム(Ⅳ)による鉄(Ⅱ)塩の酸化還元滴定の指示薬として利用され,フェロインという別名で知られている。検出限界濃度は0.5ppmで,コバルト(Ⅱ)や銅(Ⅱ)が妨害する。有毒。廃棄法は燃焼分解による。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「フェナントロリン」の意味・わかりやすい解説

フェナントロリン

フェナントレンの2個の炭素原子を窒素原子で置換した化合物。3種類の異性体がある。o‐フェナントロリンは白色の結晶で,融点117℃,沸点300℃以上。エタノールに可溶。金属イオンと安定なキレート化合物を作り,特に第一鉄イオン(Fe2(+/))により赤色を呈する。金属の定量,酸化還元指示薬に使用。(図)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「フェナントロリン」の解説

フェナントロリン

 C12H8N2 (mw180.21).

 第一鉄イオンと反応して赤色の色素を生じ,この反応を利用して鉄の定量を行う.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android