フエゴ島(読み)フエゴとう(英語表記)Tierra del Fuego

精選版 日本国語大辞典 「フエゴ島」の意味・読み・例文・類語

フエゴ‐とう ‥タウ【フエゴ島】

(フエゴはFuego) 南アメリカ大陸の南端にある島、ティエラ‐デル‐フエゴの略称。

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デジタル大辞泉 「フエゴ島」の意味・読み・例文・類語

フエゴ‐とう〔‐タウ〕【フエゴ島】

Isla Grande de Tierra del Fuego》南アメリカ大陸南端部の島。マゼラン海峡の南にあり、ティエラ‐デル‐フエゴ(フエゴ諸島)中で最大の面積をもつ。東半部はアルゼンチン領、西半部はチリ領。中心都市ウスワイア。金・石油などを産出。

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改訂新版 世界大百科事典 「フエゴ島」の意味・わかりやすい解説

フエゴ[島]
Tierra del Fuego

南アメリカ大陸の南端とマゼラン海峡を隔てて向かい合う三角形状の島。〈火の島〉の意。主島の面積4万8187km2。島の約3分の2を占める西側がチリ領ティエラ・デル・フエゴ県(主都ポルベニル),残り3分の1を占める東側がアルゼンチン領のティエラ・デル・フエゴ準州(主都ウスワイア)である。人口はチリ領9527(1982),アルゼンチン領10万1000(2001)。両国間の境界線は1881年イギリス王室の調停により,大西洋側のエスピリト・サント岬からビーグル海峡に至る西経68°36′38″に設定された。しかし同裁定後も両国間の領土紛争が続き,とくに1970年代半ば以降,同島海域の石油埋蔵資源をめぐりビーグル海峡東端のピクトン,ヌエバ,レノス3島とその海域の帰属問題で両国間の対立が先鋭化した。イギリス王室,ローマ教皇庁が仲裁に入ったが事態は難航し,84年ようやく3島をチリ領とすることで決着した。年間平均気温6℃,最暖月11℃,最寒月1℃前後,年間降水量は350~500mm。北西部は180m以下の台地状をなし,南東部は2000m以上に達する山脈になっている。

 1520年,マゼラン一行が探検し〈火の島〉と命名した。当時同島にはオナ,ヤーガンアラカルフなどの原住民が住み,同島は原住民の間では〈オニシン(オナ族の地)〉と呼ばれていた。19世紀初めまでヨーロッパ人の渡来はまれであったが,その後南大西洋に航海基地を求めるイギリスの注目を集め,同国船団が渡来するようになった。さらにキリスト教の布教,入植が開始され,1870年トマス・ブリッジが定住して英国国教会の布教活動を開始,のちにヤーガンの言語辞典を著した。牧羊業の導入,東部および南東部海岸沿いでの金鉱発見により,1880年代以降ヨーロッパ人の入植が相次ぎ,原住民人口は激減した。現在,人口の大半はヨーロッパ系白人によって占められている。牧羊業,石油・天然ガス採掘が経済の中心で林業,漁業も盛ん。ウスワイアが代表的港で大西洋と太平洋を結び,南極航行への基地ともなっている。
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フエゴ島に居住していた原住民を総称してフエゴ島民といい,ヤーガン,アラカルフ,オナOnaの3部族があった。いずれも採集狩猟民であるが,前2者は海岸部に居住し,食料を主として海藻,貝類,魚類,海獣に依存し,樹皮製のカヌーを利用したので,カヌー・インディオとも呼ばれる。家族以上の社会組織はなく,海浜部に分散して住み,移動性の高い生活をしていた。オナは内陸部に居住し,ラクダ科動物のグアナコをはじめ動物の狩猟が主になっていた。オナの場合は血縁を基礎にしたバンド組織があり,領有する一定地域内で獲物を求めての移動生活をしていた。フエゴ島民に初めて接したヨーロッパ人はマゼランであったが,ダーウィンビーグル号の航海で接している。もともと人口は少なかったが,19世紀末から羊の牧草地を求めて白人の入植が盛んになり,疫病の流行が主たる原因で人口が激減し,今日では絶滅に近い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フエゴ島」の意味・わかりやすい解説

フエゴ島
フエゴとう
Tierra del Fuego

正式名称ティエラデルフエゴ島。南アメリカ南端にある島群。マゼラン海峡によって大陸部からへだてられ,東は大西洋,西は太平洋,南は南極海によって囲まれる。ほぼ三角形をなした大フエゴ島 Isla Grande de Tierra del Fuego (単にフエゴ島と呼ばれることもある) を主島とし,ビーグル海峡をはさんでその南に並ぶナバリノ島,オステ島,西方に連なるクラレンス島,サンタイネス島,デソラシオン島などを含む多数の島,小島,岩礁から成り,最南のオルノス島に南アメリカの最南端とされるホーン (オルノス) 岬がある。総面積約7万 3700km2。行政的には大フエゴ島の東半がアルゼンチン領 (ティエラデルフエゴ准州) で,総面積の約3分の2にあたるその他の部分がチリ (マガヤネス州) に属する。 19世紀以来両国で領有を争っていたビーグル海峡入口の3島 (ピクトン,ヌエバ,レノックス) は,1984年チリへの帰属が決った。大フエゴ島の北部は氷河湖やモレーンなどの氷河地形が発達した標高 180m以下の低地であるが,それ以外はアンデス山脈の南の延長にあたり山がちで,2000mをこえる高峰があり,山岳氷河もみられる。気候は年間を通して冷涼ないし寒冷。偏西風帯に位置し,強い西風が吹き,その風上にあたる西部は年降水量 5000mmに達する多雨域となっているが,風下の東部では 500mm以下に減少。 1520年 F.マゼランが,のちにマゼラン海峡と名づけられた海峡を航行した際に発見し,沿岸に先住民が燃やす夜火が見えたことからティエラデルフエゴ (スペイン語で「火の土地」の意) と命名したが,その後 19世紀初めまで組織的な踏査はなされなかった。この間先住民のオナ族,ヤーガン族などが昔ながらの狩猟採集生活を営んできたが,牧牛の導入と金の発見により 1880年頃からチリ人やアルゼンチン人の入植が盛んになり,81年両国の国境線が西経 68°36′38″の線およびビーグル海峡に沿って定められた。現在大フエゴ島を中心に牧牛,林業,漁業,水産加工,毛皮採取などが行われるほか,石油採取が重要な産業となっている。 1945年同島北部で発見された油田はチリにとって唯一の油田として重要な役割を果している。交通網は未発達であるが,アルゼンチン領のウスアイアリオグランデ,チリ領のポルベニルなどの町を結ぶ道路がある。大陸部とは水路で連絡するほか,定期航空便も就航している。人口はアルゼンチン領6万 9450 (1991推計) ,チリ領 6793 (1980推計) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フエゴ島」の意味・わかりやすい解説

フエゴ島
ふえごとう
Isla Grande de Tierra del Fuego

南アメリカ大陸南端部の島。マゼラン海峡以南にあるティエラ・デル・フエゴの群島のうち最大の島である。島の南側はビーグル海峡によって、ホーン岬のある大陸最南の島々と隔てられている。面積4万8200平方キロメートル。このうち東半分の約2万平方キロメートルがアルゼンチン、西半分がチリに属す。

 年間を通じて太平洋からの偏西風が吹きすさぶが、とくに春に強く吹く。低地における年平均気温は一般に5~7℃、気温年較差は10℃以下であり、南緯52度から55度という高緯度に位置するわりには厳しくない海洋性の気候をもつ。島の北東部と南西部では自然の特徴に多くの差異がある。北東部は中生代から新生代にかけての堆積(たいせき)岩からなる低山、台地、平野で、偏西風の山陰にあたるため降水量が少なく、草原になっており、主としてイギリスからの移住者たちによって開かれた大農場(エスタンシア)でヒツジの放牧が行われている。これに対して、アンデス山脈の南方への続きにあたる島の南西部は、古生代ないしそれ以前の変成岩類およびこれに貫入した花崗(かこう)岩類よりなり、山がちである。島の最高峰ヨーガン山(標高2469メートル)があるダーウィン山脈が走り、多くのフィヨルドに刻まれた出入りの多い海岸線を呈している。また、偏西風に直接さらされて降水量が多く、山麓(さんろく)部は森林に覆われ、高所には氷河が発達している。雪線の高さは標高1000メートル前後である。

 島の北部のマゼラン海峡沿いの地方では良質の石油を産出し、チリにとってもっとも重要な産油地帯になっている。島の人口はチリ領内に3万0400、アルゼンチン領内に12万2000(2001推計)。おもな集落に、アルゼンチンのリオ・グランデと世界最南の都市として知られるウスワイア、チリのポルベニル(大半は旧ユーゴスラビア系住民)などがある。

[松本栄次]

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