フッ化水素酸(読み)ふっかすいそさん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化水素酸」の意味・わかりやすい解説

フッ化水素酸
ふっかすいそさん
hydrofluoric acid

フッ化水素水溶液。通称フッ酸蛍石(ほたるいし)CaF2を濃硫酸と熱し、発生する気体を水に吸収させる。無色液体。刺激臭があり有毒である。市販の溶液は通常46~50%(約26mol/L)。35.37%水溶液は共沸混合物となる(最高沸点120℃)。弱酸で0.1モル溶液の電離度は約10%。濃い溶液中では、おもに2HFH++HF2-に電離しているため、KFのような塩のほかにKHF2のようなフッ化水素塩をつくる。白金、金には作用しない。銅、鉛は常温表面が侵されるだけであるが、他の金属はすべて溶かす。ガラスやケイ素化合物に反応して溶かすので、ポリエチレンや鉛貼(ば)りの容器に保存する。希フッ化水素酸は、鉄・鋼・非鉄金属などの表面処理、ガラス・電球腐食、つや消し、鋳物の砂落とし、黒鉛精製半導体エッチング、無機フッ素化合物の製造、試薬などに用いられる。有毒。皮膚に触れると組織内部まで侵されるので注意を要する。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「フッ化水素酸」の解説

フッ化水素酸
フッカスイソサン
hydrofluoric acid

フッ化水素の水溶液,フッ酸ともいう.フッ化水素カリウムの熱分解によってつくったフッ化水素を水に吸収させると得られる.工業的には,蛍石に濃硫酸を加えて加熱し,発生するフッ化水素を水に吸収させてつくる.無色の刺激性液体で,空気中で発煙する.水との共沸混合物はHF 37.73% で沸点111 ℃.希薄水溶液では弱酸で,K1 6.46×10-4.反応性に富み,種々の物質と活発に反応する.アルカリ,アルカリ土類金属,銀,鉛,亜鉛などの金属の酸化物,水酸化物または炭酸塩と反応してフッ化物を生じ,二酸化ケイ素やガラスなどのケイ酸塩と反応して四フッ化ケイ素を生じる.

CaSiO2 + 6HF → SiF4 + CaF2 + 3H2O

ほとんどの金属は侵されるが,白金,金は侵されない.また,銀,銅も侵されにくく,鉛は表面が侵されるのみである.フッ化水素酸はポリエチレン,鉛,パラフィン製容器などに貯蔵される.フッ素化合物の製造,電球のつや消し,ガラスの腐食(ガラス器具の目盛など),鋳物の砂落し,ステンレスの表面処理,ウランの製造,鉱石の溶解,分析試薬などに用いられる.きわめて毒性が強く,皮膚,粘膜をはげしくおかす.[CAS 7664-39-3:HF]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フッ化水素酸」の意味・わかりやすい解説

フッ化水素酸
フッかすいそさん
hydrofluoric acid

フッ化水素の水溶液。略してフッ酸ともいう。無色,市販品はフッ化水素含有量 50~60%である。腐食性が強く,有毒である。金,白金には作用せず,鉛にはその表面を侵す程度であるが,その他のすべての金属を溶かす,ガラスのエッチング (侵食作用により模様をつけること) に用いられる。

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