フユシャク(読み)ふゆしゃく

改訂新版 世界大百科事典 「フユシャク」の意味・わかりやすい解説

フユシャク (冬尺)

鱗翅目シャクガ科の昆虫。この科の中には,一般の昆虫がまったく活動を停止するような寒冷期にだけ成虫の羽化する種類が日本だけでも30種近くおり,所属する亜科の違いから,フユシャク(ホシシャク亜科),フユナミシャクナミシャク亜科),フユエダシャクエダシャク亜科)という語尾がつけられている。いずれも晩秋から冬季を経て早春まで羽化するもので,雌の翅は退化し,樹皮や小枝上にいて,性誘引物質を放出して,交尾のため雄が飛来するのを待つ。雄は体が細く,翅の面積が広くて,弱々しい飛び方で,薄暮から夜7~8時までの間に活動する。フユシャクは日本に9種知られ,翅の開張2~2.5cmの中型から小型種である。雌は樹木の幹や枝に卵をかためて産み,毛で覆う。幼虫はいずれもシャクトリムシで,新芽の出るころに孵化(ふか)し,葉の生長とともに成長し,晩春から夏の初めに土中に入って蛹化(ようか)する。すべて年1回の発生である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フユシャク」の意味・わかりやすい解説

フユシャク
ふゆしゃく / 冬尺蛾

昆虫綱鱗翅(りんし)目シャクガ科に属するガのうち、晩秋から早春の寒冷期に成虫が羽化して、交尾、産卵する一群総称。これらのガは、幼虫は樹木や低木の新芽が出る春に孵化(ふか)し、葉を食べて初夏に蛹化(ようか)するという習性をもち、日本で30種近く知られている。これらのシャクガは、ホシシャク、ナミシャク、エダシャクの三つの亜科に所属し、いずれも雌ははねが退化して飛ぶことができず、習性が類似している。そのなかで、フユシャクとよばれる9種は、ホシシャク亜科に属し、雌のはねは完全に退化している。幼虫のなかには、害虫として注目されるクジュウフユシャクのように、九州の霧島(きりしま)山で、ミヤマキリシマ群落に多発して、大きな被害を及ぼしたような種もいる。

[井上 寛]


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百科事典マイペディア 「フユシャク」の意味・わかりやすい解説

フユシャク

鱗翅(りんし)目シャクガ科の一群のガの総称。翅(はね)の薄い弱々しい小型種ばかりで,雌は翅が退化。成虫は12〜3月に発生し,晴天の日に活動する。幼虫はナラ,サクラなどの広葉樹の葉を食べ,日本にはシロオビフユシャク,ホソウスバフユシャクなどを産する。

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