フリッシュ(Karl von Frisch)(読み)ふりっしゅ(英語表記)Karl von Frisch

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フリッシュ(Karl von Frisch)
ふりっしゅ
Karl von Frisch
(1886―1982)

ウィーン生まれのオーストリアの動物学者。ウィーン大学で医学を、ミュンヘン大学では動物学を学び、魚、とくにハヤのすばやい体色変化が、外界の刺激を視覚ではなく、頭部半透明の皮膚を通じて感じることにより行われることをみいだし、学位を得た(1910)。いくつかの大学を経て、1925年ミュンヘン大学教授、第二次世界大戦後はグラーツ大学からふたたびミュンヘン大学に戻った。

 1912年、ミツバチが色彩感覚(色覚)をもつことを証明した研究以後、ミツバチに関する多方面の研究を行った。ミツバチが偏光を感じる能力を発見し、さらに1919年に彼をもっとも有名にさせたミツバチダンスを発見し、驚くべきミツバチのコミュニケーションを明らかにした。ミツバチが学習する性質を利用した簡単な野外実験で、感覚生理学または行動生理学的な諸問題を謎(なぞ)解きする彼の研究方法は、エソロジーの創設者の一人であるティンバーゲンの研究方法にも影響を与えた。1973年、ローレンツ、ティンバーゲンとともにエソロジーの優れた研究業績でノーベル医学生理学賞を受賞した。彼らはエソロジーを創設したが、フリッシュ自らについて行動学者ということばは使わなかった。

[川道武男]

『フリッシュ著、内田享訳『蜜蜂の不思議――その言葉と感覚』(1953・法政大学出版局)』『フリッシュ著、伊藤智夫訳『ミツバチを追って――ある生物学者の回想』(1969/新装版・1978・法政大学出版局)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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