フルフラール(英語表記)furfural

改訂新版 世界大百科事典 「フルフラール」の意味・わかりやすい解説

フルフラール
furfural


フラン環をもつアルデヒドで,α-フランアルデヒドに相当する。フルフルアルデヒドともいう。特有なにおいをもつ無色液体融点-38.7℃,沸点161.7℃。放置するとしだいに褐色になり,かつ樹脂化する。自然界には各種の植物精油,たとえば丁字油等に微量含まれる。ペントース加水分解で得られ,工業的にはペントサン(ペントースを含む多糖類)を含む植物体(エンバク麦稈(むぎから)など)を加水分解してつくる。近年は製糖工業の副産物である糖みつから得られる。酸化剤によって容易に2-フランカルボン酸ピロ粘液酸),還元すればフルフリルアルコールとなる。フルフラールにシアン酸ナトリウムを作用させるとアジポニトリルが得られ,これを還元するとナイロンの原料アジピン酸になる。

そのほか,フルフラール樹脂などの原料,溶剤として広い用途をもつ。弱い毒性があり取扱いには注意を要する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フルフラール」の意味・わかりやすい解説

フルフラール
ふるふらーる
furfural

複素環式アルデヒドの一つ。2-フランカルバルデヒド、α(アルファ)-フルアルデヒドなどともよばれる。フーゼル油をはじめ、いくつかの精油中に含まれている。

 ペントースの脱水により生成し、工業的にはトウモロコシの穂軸、エンバクの籾殻(もみがら)を、希硫酸と加熱しながら蒸留するなどの方法により得ている。特異なにおいをもつ無色油状の液体。水に溶け、エタノールエチルアルコール)、エーテルとも任意の割合で混じり合う。空気中に放置すると、酸化されて黄褐色の樹脂状物質になる。工業的にはフェノール・フラン樹脂の原料、石油化学用溶剤、テトラヒドロフランなどの原料、殺虫剤などに用いられる。急性毒性としては酔い・頭痛などの症状があり、慢性毒性としては肝臓障害・変異原性が報告されている。

[廣田 穰 2015年7月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フルフラール」の意味・わかりやすい解説

フルフラール
furfural

2-フリルアルデヒドのこと。ある種の精油中に含まれているペントースを脱水して得られる。工業的にはペントサンを含む植物体,たとえば麦わらなどを加圧下で水蒸気を作用させたり,希硫酸または希塩酸と処理することによって得られる。6,6-ナイロン製造原料,フェノールフラン樹脂の原料,殺虫剤,抗カビ剤,抗菌剤などの製造原料,石油の脱硫溶剤,その他諸目的の溶剤として用いられる。特異臭のある無色の油状液体。アルデヒド基をもち,長時間放置すると酸化されて黄褐色から黒褐色となる。沸点 162℃。水,アルコールによく溶ける。大量に吸入すると頭痛を起し,中枢神経に作用するので,取扱いには注意を要する。

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百科事典マイペディア 「フルフラール」の意味・わかりやすい解説

フルフラール

フラン環をもつアルデヒドC5H4O2。特有のにおいのある無色の液体。融点−38.7℃,沸点161.7℃。水に可溶,エタノールに易溶。もみ殻,麦わらなどを加圧水蒸気で処理して得る。溶剤,合成樹脂原料などとして用いられる。(図)
→関連項目フラン(化学)

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栄養・生化学辞典 「フルフラール」の解説

フルフラール

 C5H4O2(mw96.09).

 ペントースの脱水で生成する物質.化学工業の原料,溶媒などに使われる.

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化学辞典 第2版 「フルフラール」の解説

フルフラール
フルフラール
furfural

[同義異語]2-フルアルデヒド

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