ブッシュ(George Walker Bush、アメリカ合衆国第43代大統領)(読み)ぶっしゅ(英語表記)George Walker Bush

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ブッシュ(George Walker Bush、アメリカ合衆国第43代大統領)
ぶっしゅ
George Walker Bush
(1946― )

アメリカ合衆国第43代大統領(在任2001~2009)。コネティカット州生まれ。父は第41代大統領ジョージ・ブッシュGeorge Herbert Walker Bush。少年時代をテキサス州で過ごす。1968年エール大学卒業後、テキサス州空軍のパイロットとなる。1975年ハーバード大学大学院卒業。1975年から1986年までテキサス州で石油ビジネスにかかわったのち、1988年の父親の大統領選挙に顧問兼スピーチライターとして貢献した。1989年アメリカ大リーグのテキサス・レンジャーズを共同で買収し、1994年までその共同経営者となる。1994年テキサス州知事に当選、1998年には総投票数の約7割を獲得して再選された。再選時にヒスパニック票の約50%、女性票の65%を集めるなど、従来の共和党候補にない幅広い支持層が注目され、共和党の大統領候補の本命として浮上した。政策スローガンとして「思いやりのある保守主義」を掲げ、2000年8月の共和党全国大会で正式に大統領選党候補の指名を受けた。同年11月の大統領選挙では、民主党候補ゴアとの大接戦を制して当選。2001年1月、大統領に就任した。同年9月に起きたアメリカ同時多発テロでは、事件の首謀者とみなされるオサマ・ビンラディンの引き渡しを拒否したアフガニスタンに攻撃を加える決定をした。また、国連の大量破壊兵器査察団による査察に非協力的態度をとったイラクフセイン政権打倒とイラク国内の大量破壊兵器を排除する目的で、国際世論を押し切って2003年3月、イギリスと共同で、イラクを攻撃(イラク戦争)。アメリカ・イギリス両軍は同年4月にはイラクの主要な都市を制圧し、フセイン政権を崩壊させた。2004年11月の大統領選挙では民主党候補のケリーに勝利し、再選を果たした。

 2005年1月、2期目のブッシュ政権が正式に発足。1期目に引き続き、自由と民主主義の推進、テロとの闘いの継続などの方針を打ち出し、ライス前補佐官を国務長官任命、対外的にはイラク戦争の正当性と「中東の民主化」支援を訴えた。また、社会保障制度改革を内政面の最重要課題とした。しかし、2005年8月のハリケーンカトリーナ」被災の際の対応の遅れ、CIA秘密工作員を巡る情報漏洩(ろうえい)問題などで支持率が低下、同年末には、イラク戦争開戦時の大量破壊兵器の報告についての誤りを認めた。

 2006年11月の中間選挙で共和党が敗北したのを機に、ラムズフェルド国防長官を更迭。2007年1月には、テレビ演説でイラクの治安悪化の責任を述べ、イラク駐留米軍増派を含めた新政策を発表。人権尊重を標榜(ひょうぼう)し、北朝鮮による日本人拉致被害者家族と面会、またチベット仏教の指導者ダライ・ラマ(第14代テンジンギャツォ)と会談するなどしている。また、任期中には低所得者向けの住宅ローンであるサブプライムローンの延滞が増加、このローンを証券化した金融商品が世界中に販売されていたこともあり影響力は大きく、2007年の世界同時株安、2008年の世界金融危機につながった。これらの金融危機への対応が遅れたことにも批判が集まった。2009年1月、任期満了で退任した。

[編集部]

『藤井厳喜著『ジョージ・ブッシュと日米新時代』(2001・早稲田出版)』『J・H・ハットフィールド著、二宮千寿子他訳『幸運なる二世ジョージ・ブッシュの真実』(2001・青山出版社)』『ボブ・ウッドワード著、伏見威蕃訳『ブッシュの戦争』(2003・日本経済新聞社)』『大島寛著『ブッシュ政権』(2003・NCコミュニケーションズ)』『アンドリュー・デウィット、金子勝著『反ブッシュイズム いかにブッシュ政権は危険か』(2003・岩波書店)』『ピーター・シンガー著、中野勝郎訳『「正義」の倫理――ジョージ・W・ブッシュの善と悪』(2004・昭和堂)』『三浦俊章著『ブッシュのアメリカ』(岩波新書)』


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