ブッポウソウ(読み)ぶっぽうそう(英語表記)roller

翻訳|roller

改訂新版 世界大百科事典 「ブッポウソウ」の意味・わかりやすい解説

ブッポウソウ (仏法僧)
broad-billed roller
Eurystomus orientalis

ブッポウソウ目ブッポウソウ科の鳥。全長約30cm。全体に濃青緑色で,翼には大きな白斑がある。くちばしと脚は赤い。アジア東部,マレー諸島,オーストラリアに分布し,アジア北部で繁殖するものやオーストラリアで繁殖するものは,熱帯に渡って越冬する。日本にも夏鳥として渡来する。本州・四国・九州の山地で繁殖しているが,生息数は多くない。自然にできた樹洞,キツツキ類が掘った穴,橋脚の隙間,堰堤(えんてい)の水抜き穴などに営巣する。渡来の時期,生息地がよく似ているところから,かつて,〈ブッポウソウ〉と鳴く鳥はこの種だと思われていたが,〈ブッポウソウ〉と鳴く声の主は,実はフクロウ科のコノハズクであることが判明した。このため,この種を〈姿のブッポウソウ〉といい,コノハズクを〈声のブッポウソウ〉という。本種は,ブッポウソウとは鳴かず,〈ゲッ,ゲッ,ゲッ〉と聞こえる声で鳴く。

 ブッポウソウ科Coraciidaeの鳥はブッポウソウ亜科11種とジブッポウソウ亜科5種に分類される。全長24~40cm。ブッポウソウ亜科の鳥は,一般に青色,緑色,紫色などの羽色よりなり,少しずんぐりした体型をしている。数種では尾羽の最外側羽がかなり長い。くちばしは太めで,幅が広く,先端はかぎ状に曲がっている。旧世界の温帯,熱帯に広く分布し,高緯度地方で繁殖するものは熱帯へ渡る。森林生であるが,種によっては林縁部や開けた農耕地にすんでいる。一般にテリトリー性が強く,どの種も樹洞で営巣する。突き出た枝や朽木の頂上などにとまって獲物を見張り,地上の大型昆虫トカゲ,その他の小動物を襲い,空中で大型の昆虫も捕食する。

 ブッポウソウ類の英名はrollerというが,これはこの仲間が空中で宙返りをしたり,うねるように飛ぶ(rolling)ディスプレーを行うためである。ジブッポウソウ亜科の5種は,みなマダガスカル島に分布している。一般にブッポウソウ亜科の鳥に比べて羽色がややじみで,胸腹部は白っぽいか,うろこ状の褐色斑がある。オナガジブッポウソウUratelornis chimaera(英名long-tailed ground roller)は荒地や乾燥地に生息し,他の4種は森林にすむ。

 ブッポウソウ目Coraciiformesは,カワセミ科コビトドリ科ハチクイモドキ科,ハチクイ科,オオブッポウソウ科,ブッポウソウ科,ヤツガシラ科カマハシ科サイチョウ科の諸科に分類され,その特徴一つは,3本の前趾(ぜんし)が基部で互いに癒着している(合趾足(ごうしそく))ことである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブッポウソウ」の意味・わかりやすい解説

ブッポウソウ
Eurystomus orientalis; Oriental dollarbird

ブッポウソウ目ブッポウソウ科。全長 25~34cm。頭部,腮(さい。あご)が黒褐色で,喉が紫青色。それ以下の背面と下面は濃緑青色。と尾は青みがかった黒色で,翼にはよく目立つ青みがかった白色の斑がある。と脚は赤い。オーストラリアにすむ亜種は頭部が灰褐色で,腹部の羽色も薄い。インド東部,ヒマラヤ地方から東アジア東南アジア,オーストラリアまで繁殖分布し,東アジアと,北部を除くオーストラリアでは夏鳥(→渡り鳥)である。日本にも夏鳥として 5月上旬に渡来し,おもに標高 1000m以下の大木のある森林に生息する。樹洞で営巣するが,建造物のすきまや巣箱に巣をつくることも多い。しわがれた声で「げっ,げっ」と鳴く。「ぶっぽうそう(仏法僧)」と聞こえる声で鳴く鳥は本種ではなく,コノハズクである。山梨県身延町,宮崎県高原町,長野県木曽町の三岳,岐阜県美濃市などの繁殖地は国の天然記念物に指定されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブッポウソウ」の意味・わかりやすい解説

ブッポウソウ
ぶっぽうそう / 仏法僧
roller

広義には鳥綱ブッポウソウ目ブッポウソウ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Coraciidaeには、アフリカ、ヨーロッパ南部、アジア南部に分布するブッポウソウ亜科11種と、マダガスカル島特産のジブッポウソウ亜科5種の合計16種がある。ブッポウソウ亜科の鳥は全長25~35センチメートル、頭部が大きく平たい。嘴(くちばし)は太くて大きく開き、尾は円尾や凹尾であるが、燕尾(えんび)の種もある。体は青、緑、褐色などで美しい色をしている。飛翔(ひしょう)は巧みで、長めの翼をしなやかに羽ばたいて、旋回や急降下を行う。ジブッポウソウ亜科のうち4種までが森林の地上で生活するが、1種だけは砂漠にすむ。全長25~35センチメートル、頭は大きく翼は短いが、なかには尾の長い種もある。昆虫や爬虫(はちゅう)類を捕食する。

 種のブッポウソウEurystomus orientalisはオーストラリアからアジア南部、中国などに分布し、日本には夏鳥として渡来する。全長約30センチメートル、体は暗緑色、頭部は黒く上胸は青色、翼と尾は暗青色で、初列風切(かざきり)には青白色の円い斑紋(はんもん)があり飛翔中によく目だつ。嘴は太くて赤色、足も赤い。本州、四国、九州の低地から低山の林にすみ、とくにスギの大木のある場所に多い。しなやかな翼動で軽々と飛び回る。高木の枯れ枝に止まっていて、飛んでいる昆虫をみつけると飛び立ってとらえる。樹洞、建物や橋のすきまなどに産卵する。ゲェーゲゲゲと鳴く。古来この鳥の鳴き声と思われていた「ブッポウソウ」はコノハズクの声であることが、1935年(昭和10)に判明した。

[高野伸二]


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百科事典マイペディア 「ブッポウソウ」の意味・わかりやすい解説

ブッポウソウ

ブッポウソウ科の鳥。翼長19cm。くちばしと脚は赤く,体は青緑色。アジア東・南部に分布し,北方のものは冬南へ渡る。日本には本州,四国,九州に夏鳥として渡来。低地〜低山の林にすみ,木の穴を巣とする。ギッギッゲゲゲッと飛びながら鳴く。セミ,コガネムシ等大型昆虫を捕食。絶滅危惧IB類(環境省第4次レッドリスト)。和名は仏法僧の意だが,ブッポーソーと鳴く鳥はコノハズクであることが1935年判明した。

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世界大百科事典(旧版)内のブッポウソウの言及

【鳳来寺】より

…本尊薬師如来は日本三薬師の一つという。ブッポウソウ(仏法僧)の生息地としても著名である。【船岡 誠】。…

※「ブッポウソウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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