ブドウ(葡萄)球菌(読み)ぶどうきゅうきん

百科事典マイペディア 「ブドウ(葡萄)球菌」の意味・わかりやすい解説

ブドウ(葡萄)球菌【ぶどうきゅうきん】

化膿球菌一種。大きさ約1μmの通性嫌気(けんき)性グラム陽性菌。固体培地上で不規則なブドウの房状の集団配列をなすところからこの名がある。黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌に分類され,前者は化膿や細菌毒素食中毒の原因となり(この毒素は熱に強いため,汚染された食品は加熱しても中毒の予防にならない),後者は病原性がないとされる。細菌の中でも死滅しにくく,病院内で感染したり,急性腸炎や,新生児敗血症を起こしたりする。最近はMRSAなど耐性菌が増加。→嫌気性菌グラム陽性菌MRSA感染症
→関連項目アクリノールカナマイシン烏のお灸関節炎球菌細菌スーパー抗原【せつ】とびひ扁桃炎蜂巣織炎毛嚢炎ものもらい卵管炎卵巣炎涙嚢炎

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改訂新版 世界大百科事典 「ブドウ(葡萄)球菌」の意味・わかりやすい解説

ブドウ(葡萄)球菌 (ぶどうきゅうきん)
Staphylococcus

ブドウ状球菌ともいう。グラム陽性,直径0.8~1.0μmの球形の細菌で,通常の培地で容易に培養される。非運動性,芽胞非形成性の通性嫌気性細菌で,固体培地上では無差別な空間方向に分裂増殖してブドウの房状の配列を示すことから,この名がある。しかし双球菌状,あるいは短鎖状の配列もとる。病原性の弱い表皮ブドウ球菌は人間の皮膚および粘膜上に常在しているが,病原性の強い黄色ブドウ球菌は,連鎖球菌と並んで化膿の代表的な原因菌であり,食中毒の原因菌ともなる。黄色ブドウ球菌の多くは,溶血毒素(α,β,γ,δの種類がある),食中毒症状を引き起こす腸管毒(エンテロトキシン),および種々の酵素あるいは菌体外タンパク質など(ヒトの血漿を凝固させるコアグラーゼ,プロテアーゼ,ヌクレアーゼ,ペニシリナーゼなど)を産生する。ブドウ球菌エンテロトキシンは熱に安定であるため,ブドウ球菌が汚染・増殖した食品を加熱しても中毒の予防にはならない。したがって食中毒の予防には,食品のブドウ球菌による汚染の防止が第一に必要である。
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世界大百科事典(旧版)内のブドウ(葡萄)球菌の言及

【細菌】より

…細菌のなかには,細胞分裂後に細菌どうしが離れずに,互いにくっつき合って配列するものがある。そのため,球菌では単球菌のほかに,双球菌,連鎖球菌,ブドウ球菌などの形状がみられ,杆菌では短杆菌や長杆菌のほかに,連鎖杆菌あるいはV字形やY字形などのように配列した形状のものなどがみられる。らせん菌は形がらせん状で,スピロヘータ類によく似ているがまったく異なるものである。…

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