ブラシュ石(読み)ぶらしゅせき(英語表記)brushite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラシュ石」の意味・わかりやすい解説

ブラシュ石
ぶらしゅせき
brushite

カルシウム(Ca)の含水酸性リン酸塩。CaH[PO4]・2H2Oの式が示すように石膏(せっこう)と同構造。チャーチ石系に属する。自形はb方向に扁平(へんぺい)な平行四辺形板状あるいはこれを基調とする薄板状。繊維状、細柱状あるいは土状のものが多い。もっとも普通の洞窟鉱物(どうくつこうぶつ)cave mineralsの一つ。グアノ堆積(たいせき)物や堆積性の燐(りん)鉱床で主鉱石の水酸燐灰石(りんかいせき)に伴われる。洞窟鉱物として産する場合の共生鉱物は多く含炭酸相であるため、風化分解の仕方によっては炭酸基がカルシウムとともに除去され、カルシウム:リン比が上昇することで生成されるとされている。日本では神奈川県座間(ざま)市で古代の遺跡から発掘された人骨の分解物として生成されたものがある。

 共存鉱物は水酸燐灰石、タラナキ石taranakite(K3Al5[(PO3OH)3|PO4]2・18H2O)、アルデアル石ardealite(Ca2H[SO4|PO4]・4H2O)、バリシア石、石膏など。土壌になってしまうと石膏とまったく区別がつかない。ただ非常に薄い板状になったものは、薄い面に平行な完全劈開(へきかい)のほかに板の伸びの方向に平行な劈開があり、これによって板状のものを壊すと、直線的な劈開の痕跡(こんせき)が発生するが、繊維状のものではわからない。命名アメリカ、エール大学教授で鉱物学者のジョージ・ジャービス・ブラッシュGeorge Jarvis Brush(1831―1912)にちなむ。

加藤 昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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