ブラーフミー文字(読み)ブラーフミーもじ

精選版 日本国語大辞典 「ブラーフミー文字」の意味・読み・例文・類語

ブラーフミー‐もじ【ブラーフミー文字】

〘名〙 (ブラーフミーはBrāhmī) サンスクリットを記すのに用いられた最古文字フェニキア文字が紀元前八〇〇年ごろインドに入り、それが改良されてできたもの。悉曇(しったん)文字やデーバナーガリーの祖。

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デジタル大辞泉 「ブラーフミー文字」の意味・読み・例文・類語

ブラーフミー‐もじ【ブラーフミー文字】

《〈梵〉Brāhmīアショカ王碑文に刻まれている古代インドの文字。のちに、ナーガリー文字チベット文字成立した。

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百科事典マイペディア 「ブラーフミー文字」の意味・わかりやすい解説

ブラーフミー文字【ブラーフミーもじ】

カローシュティー文字とならび,古代インドで前300年ごろ使われた文字の一つ。起源については,インド固有のものとみる説もあるが,最近ではセム系説が有力。現在この系統の文字はインドから東南アジア中央アジアからチベットに及んでいる。アショーカ王石柱の碑文が古代における最も重要な資料である。日本では梵(ぼん)字悉曇(しったん)として知られる。
→関連項目オケオテルグ語トカラ語ミーラーン

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改訂新版 世界大百科事典 「ブラーフミー文字」の意味・わかりやすい解説

ブラーフミー文字 (ブラーフミーもじ)
Brāhmī

古代インドの文字。アショーカ王碑文はこの文字で刻まれている。グプタ朝期には地域差が現れ,6世紀にかけてそれが明確となり,南北両系に分かれた。10世紀ころから12世紀にかけて,近代インド諸言語(タミル語を除く)が徐々に発達し,それぞれ独自の文学をもって登場するようになると,これに促され,12世紀から16世紀にかけ,南北各ブラーフミー文字から派生して現行インド系文字(ウルドゥー,シンディー,カシミーリーを除く)が成立した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラーフミー文字」の意味・わかりやすい解説

ブラーフミー文字
ぶらーふみーもじ

古代インド文字。アショカ王碑文はこの文字で刻まれている。4世紀から6世紀にかけて南北両系に分かれ、北方系ブラーフミーBrāhmī文字からシッダマートリカーSiddha-mātkā文字、この文字からナーガリー文字をはじめとする現行インド系文字が成立している。南方系ブラーフミー文字からパッラバPallava文字、続いてサンスクリット語文献(グランタ)を写すためのグランタGrantha文字などが成立し、ドラビダ諸言語を表記する現行諸文字へと連なっている。北方系ブラーフミー文字はさらに北上し、チベット文字をはじめとする諸文字、南方系ブラーフミー文字は海を渡って東南アジアの諸文字の成立に刺激を与えた。

田中敏雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブラーフミー文字」の意味・わかりやすい解説

ブラーフミー文字
ブラーフミーもじ
Brāhmī alphabet

古代インドで用いられた文字。セム系のアルファベット母体にしてできたものと考えられる。知られている最古のものは前4世紀。古代インドには,これと並んでカローシュティー文字があったが,ブラーフミー文字がこれを圧倒した。4世紀頃のインドで用いられたグプタ文字中国,日本に伝わった悉曇 (しったん) 文字,現在インドの諸地方で用いられているデーバナーガリー文字はブラーフミー文字を母体としている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ブラーフミー文字」の解説

ブラーフミー文字(ブラーフミーもじ)
Brāhmī

古代インドの文字。最古のものはアショーカ碑文にみられ,46の字母で左横書きされた。その後字体はかなり変化し,地方的違いも生まれ,今日のインドの諸文字が生まれた。また,グプタ朝期以降,中央アジアや東南アジアにも伝わった。その起源については諸説あるが,現在のところ北セム系のアラム文字が有力である。

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世界大百科事典(旧版)内のブラーフミー文字の言及

【インド系文字】より

…この文字はインダス文明の滅亡とともに忘れ去られてしまった。滅亡の時期を前1500年とすると,ブラーフミー文字による現存最古の碑文の年代まで約12世紀の断絶があり,この断絶を埋める文字資料は発見されていない。 1837年,ジェームズ・プリンセプによってほぼ解読されたブラーフミー文字,同人によって17文字解読されたカローシュティー文字は,アショーカ王による石柱,磨崖碑文の文字である。…

※「ブラーフミー文字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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