ブールジェ(読み)ぶーるじぇ(英語表記)Paul Bourget

精選版 日本国語大辞典 「ブールジェ」の意味・読み・例文・類語

ブールジェ

(Paul Bourget ポール━) フランス小説家批評家評論集「現代心理論叢」で、スタンダール再評価。心理解剖小説なども手がけた。代表作弟子」。(一八五二‐一九三五

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デジタル大辞泉 「ブールジェ」の意味・読み・例文・類語

ブールジェ(Paul Bourget)

[1852~1935]フランスの小説家・批評家。実証主義科学万能主義を批判、心理分析を重視した。評論「現代心理論叢」、小説「弟子」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブールジェ」の意味・わかりやすい解説

ブールジェ
ぶーるじぇ
Paul Bourget
(1852―1935)

フランスの作家アミアンの生まれ。詩人として出発したが認められず、『現代心理論叢(ろんそう)』Essais de psychologie contemporaine(1883)、『続現代心理論叢』(1886)によって批評家として名をなした。これは当時の時代的代表者と目される作家たちの心理分析を試みた名著であるが、とくに当時まだ不当な取扱いを受けていたスタンダールの再評価をした功績は大きい。その後小説も書き始め、『残酷な謎(なぞ)』(1885)、『アンドレ・コルネリス』(1887)、『嘘(うそ)』(1887)などの心理小説の次に、問題作『弟子』(1889)を発表した。これは、当時の実証主義や科学万能主義によってもたらされた精神の危機を鋭くつくとともに、研究発表に際しての学者道徳責任を追及して大きな反響を巻き起こした。1894年アカデミー会員に選ばれた。この『弟子』を転機としてフランス伝来の宗教道徳を重んじる伝統主義者となり、『宿駅』(1902)、『離婚』(1904)、『真昼悪魔』(1914)、『死の意味』(1915)、『われらの行為はわれらを追う』(1927)などの小説を発表。彼は若き日にテーヌの影響によって実証主義の洗礼を受けたが、1905年にはカトリックに改宗、思想的にも右傾し「アクシオン・フランセーズ」の政治運動に加わるようになった。

[新庄嘉章]

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改訂新版 世界大百科事典 「ブールジェ」の意味・わかりやすい解説

ブールジェ
Charles-Joseph-Paul Bourget
生没年:1852-1935

フランスの小説家,評論家。テーヌに師事することによって出発した彼は,まず《現代心理試論Essai de psychologie contemporaine》(1883)によって先鋭な批評家として頭角を現した。これは彼の青春に強烈な影響を及ぼしたフランスの詩人,小説家,思想家たちを論じ,時代の精神的病患の徴候と動機を探ろうとしたものである。道徳の病患を分析し,それからの治癒を目ざす彼は,やがて小説の創作にも励み,《アンドレ・コルネリス》(1887),《弟子Le disciple》(1889)等で作家的成功を収めた。なかんずく後者はテーヌ流の実証科学至上主義への挑戦状ともいうべき小説であり,著作家の道徳的責任を追究した秀作である。《宿駅》(1902)を経て1905年にカトリックに改宗した彼は,以後もたくさんの小説を発表するが,護教的・保守的な色彩の濃い〈問題小説〉が多く,評価されるのは,《真昼の悪魔》(1914)くらいであろう。1894年にアカデミー・フランセーズ会員に選ばれた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブールジェ」の意味・わかりやすい解説

ブールジェ
Bourget, Paul Charles Joseph

[生]1852.9.2. アミアン
[没]1935.12.25. パリ
フランスの小説家,批評家。 22歳のとき処女詩集を発表。テーヌの実証主義の影響を受けた評論『現代心理』 Essais de psychologie contemporaine (1883) によって名声を得たが,小説『弟子』 Le Disciple (89) では,テーヌ流の合理的科学万能主義のもたらす精神の混乱を鋭く指摘し,以後カトリック的モラリストの立場から人間回復を目指して,社会的,家庭的な問題を追求した。しばしば心理小説の伝統の継承者とみなされる。小説『残酷な謎』 Cruelle énigme (85) ,『嘘』 Mensonges (87) ,『宿駅』L'Étape (1902) ,『離婚』 Un Divorce (04) ,『真昼の悪魔』 Le Démon de midi (14) ,『われらの行為はわれらを追う』 Nos actes nous suivent (27) 。

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百科事典マイペディア 「ブールジェ」の意味・わかりやすい解説

ブールジェ

フランスの作家。詩人として出発したが,評論《現代心理論集》(1883年―1885年)で名声を得た。スタンダール再発見の功績が大きい。のち小説に進み,実証主義の破産を描いた《弟子》(1889年)や《真昼の悪魔》など,倫理的・保守的傾向の強い作品を書いた。

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世界大百科事典(旧版)内のブールジェの言及

【ニヒリズム】より

…ロシアのニヒリストたちがアレクサンドル2世を暗殺して処刑された年,すなわち1881年の秋の遺稿で,ニーチェはすでに,おそらく彼らの立場を指してニヒリズムという語を用いている(のちのいわゆる〈能動的ニヒリズム〉)。彼がもっと広い一般的な意味でこの語を用いはじめたのは,おそらくブールジェの《現代心理試論》(1883)からデカダンスについて学んだことに関係して,86年夏以来のことである(いわゆる〈受動的ニヒリズム〉)。彼はさらに同年末以降,ドストエフスキーの《主婦》《虐げられた人々》《死の家の記録》《悪霊》などをフランス語訳で読み,地下的・流刑囚的生活者の力強い意志,およびキリスト者の病的な心理について学ぶところがあった。…

※「ブールジェ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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