プライ(読み)ぷらい(英語表記)Hermann Prey

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プライ」の意味・わかりやすい解説

プライ
ぷらい
Hermann Prey
(1929―1998)

ドイツのバリトン歌手。ベルリン生まれ。幼少時より合唱団員として歌い、ベルリン高等音楽学校などでも声楽を専攻、1952年にオペラにデビュー。翌53年ハンブルク国立歌劇場に招かれ、レパートリーの基礎をつくるとともに、ドイツ歌曲にも取り組んだ。57年『セビーリャ理髪師』のフィガロを歌いウィーンに初登場。この成功を機に世界各地の主要歌劇場で活躍するようになる。モーツァルトのオペラで多くの名唱、名演を重ねたほか、ワーグナータンホイザー』のウォルフラムも高く評価される。若々しい表情とほのかな甘みをもった声質、巧みさと率直さを兼ね備えた歌唱、演技力をもち、第二次世界大戦後のフィッシャーディースカウとともに日本で人気の高い代表的バリトンの一人として活躍。61年(昭和36)以来、たびたび来日し、コンサートやオペラで魅了した。晩年は音楽祭「シューベルティアーデ」を主宰するなど、シューベルトの歌曲に情熱を傾けた。その生誕200年にあたる97年、東京・サントリーホールで6回にわたる連続リサイタルを開いた。また同年、『冬の旅』をオーケストラ伴奏で歌う試みに挑み、ドイツと日本で公演、CDも出した。

[美山良夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「プライ」の意味・わかりやすい解説

プライ
Hermann Prey
生没年:1929-98

ドイツのバリトン歌手。ベルリン高等音楽学校で学び,1953年ハンブルク国立歌劇場と契約,57年ウィーン国立歌劇場,59年ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場にデビュー。以後欧米の主要な歌劇場に出演,とくにモーツァルトのオペラを得意とした。《フィガロの結婚》のフィガロ役,《魔笛》のパパゲーノ役などは絶賛された。バイロイト音楽祭には,65年《タンホイザー》のウォルフラム役で初出演。一方,ドイツ・リートの歌い手としても活躍し,75年からはオーストリアのホーエネムスで,シューベルトの作品だけを演奏する小規模な音楽祭〈シューベルティアーデ〉を主宰している。初来日は1961年。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プライ」の意味・わかりやすい解説

プライ
Prey, Hermann

[生]1929.7.11. ベルリン
[没]1998.7.22. クライリング
ドイツの世界的バリトン歌手。父親は貿易商,母親は歌手で,10歳の頃からボーイソプラノとしてベルリン・モーツァルト合唱団で活躍。 1949年ベルリン音楽大学に入学し,ギュンター・バウムに師事。 52年ウィースバーデン歌劇場でデビュー。 53年からハンブルク国立歌劇場で活躍し,55年ウィーン国立歌劇場で『セビリアの理髪師』のフィガロ役で大喝采を浴びる。 56年カーネギー・ホールでリサイタルを開きアメリカデビュー。『フィガロの結婚』のアルマビーバ伯爵,『魔笛』のパパゲーノ,『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のベックメッサー役など多くのはまり役をもつ。カリスマ的なステージと,シューベルトからミュージカル曲までこなす明瞭な音楽性で,第2次世界大戦後のドイツを代表する国民的歌手となった。ドイツ連邦共和国功労十字章を受章。

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