プリンキピアマテマティカ(英語表記)Principia Mathematica

改訂新版 世界大百科事典 の解説

プリンキピア・マテマティカ
Principia Mathematica

A.N.ホワイトヘッドB.A.W.ラッセル共著。3巻。1910-13年刊行。《数学原理》とも訳される。自然数(基数)は集合によって定義され,これをもとにいっさいの数学(解析学)的命題論理学のことばで述べられ,論理学の原理から導き出されるという,数学基礎論における論理主義の立場を実際に行ってみたもの。ここでいう論理学は数理論理学記号論理学)で,この論理学もこの本で初めて便利に記号化され,欠点はあるがほぼ完全に体系化された。そのためこの本は数理論理学の古典とされる。なお集合論における〈ラッセルパラドックス〉は初版では分岐階型理論という複雑な理論で解決されているが,第2版では単純階型理論という簡明な理論によって処理されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のプリンキピアマテマティカの言及

【数学基礎論】より

…論理主義と呼ばれる立場に立つラッセルは,数学は論理学の1分科であるとし,逆理はさまざまな概念の〈型〉を無視するために生ずるものと主張する。実際に,A.N.ホワイトヘッドとの共著による3巻からなる大著《プリンキピア・マテマティカ》で,〈分岐した型の理論〉の記号論理の体系を建設し,その中で実数論を構成したが,その際,〈型の解消にかかわる〉還元公理という不満足なものを仮定せざるをえなかった。L.E.J.ブローエルは,数学的真理や対象は数学を考える精神とかかわりなく存在するとはせず,経験的・直観的精神活動によって直接にとらえられるものであって,実際に構成できる対象だけが数学的存在であると主張する。…

【ホワイトヘッド】より

…ケント州ラムズゲートで英国国教会牧師の家に生まれる。ケンブリッジ大学で数学を専攻し,生徒の一人B.A.W.ラッセルと協力して,数学を形式論理学から演繹(えんえき)することを企て,《プリンキピア・マテマティカ》3巻(1910‐13)を著す。この著作は記号論理学の歴史における画期的な業績として評価されている。…

【ラッセル】より

…これはのちの論理学,数学基礎論,意味論の動向に大きな影響を及ぼすものであった。ラッセルはタイプ理論の案出によってこのパラドックスを解決し(1908),師A.N.ホワイトヘッドとともに大著《プリンキピア・マテマティカ》(1910‐13)を著して数理論理学と数学を論理学に還元する論理主義の金字塔を建てた。一方,いわゆる〈記述〉理論を発表して(1905),見かけ上の主語‐述語形式言明を存在言明におきかえる方策を案出,これをもとに存在の種類をできるだけへらす唯名論的な存在論を完成せんとした。…

【論理学】より

…ブールによる論理学の数学化・記号化の試みは,一方においてはブール代数という形でコンピューターの基礎理論にまで発展し,他方では記号論理学という形で現代最新の論理学にまで発展する。後者についていえば,ブール以後の発展にとりわけ寄与した仕事はドイツの論理学者G.フレーゲが1879年に出した《記号を使った論理学》であり,イギリスの論理学者B.A.W.ラッセルとA.N.ホワイトヘッドの両人が1910年に出した《プリンキピア・マテマティカ》全3巻の第1巻である。そこには命題論理学をはじめ,古代や中世にはなかった限量論理学や関係論理学も含まれており,たいそう豊かなものとなっている。…

※「プリンキピアマテマティカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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