ヘルベティア人(読み)ヘルベティアじん(英語表記)Helvetier

改訂新版 世界大百科事典 「ヘルベティア人」の意味・わかりやすい解説

ヘルベティア人 (ヘルベティアじん)
Helvetier

スイス地域に居住していたケルト系部族。ラテン語ではヘルウェティイHelvetii。ゲルマン系部族の南方進出により南ドイツのケルト系部族はスイスに移住し,その中のヘルベティア族は前2世紀末にライン川,ジュラ山脈,アルプスに囲まれた地に定住した。さらに平安な土地を求めてフランスへ移住しようと試みたが,前58年ビブラクテの戦でカエサルの率いるローマ軍に敗退し,スイスの地に帰還させられて,対ゲルマン侵略の盾にさせられた。カエサルの《ガリア戦記》によれば,移住のおりに12の町と400の村を焼却したといわれるが,生活・居住形態はほとんど不明である。帰還後は比較的良好な法的地位を保障されたが,ローマがこの地に二つの植民都市を前50-前40年に建設すると,ヘルベティア人は急速にローマ化した。スイスをラテン語表記でHelvetiaと書くが,それはこの部族名に由来する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘルベティア人」の意味・わかりやすい解説

ヘルベティア人
へるべてぃあじん
Helvetier ドイツ語

ケルト系の一支族。紀元前1世紀初頭、南ドイツの原住地からスイス中部に移動し、同世紀の中葉には、さらにローヌ川河口地域に移ろうと試みたが、カエサルの指揮するローマ軍に阻止された。前15年、彼らの居住地域がローマ領に編入された結果、急速にローマ化した。3世紀中葉以降、ゲルマン系のアラマン人圧迫が強まったが、5世紀中葉には、逆にその居住地域を広げた。

[平城照介]

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