ベロニカ(英語表記)speedwell
Veronica

デジタル大辞泉 「ベロニカ」の意味・読み・例文・類語

ベロニカ(Veronica)

イエス=キリスト十字架を負って刑場に向かう途中、顔をぬぐう布をささげたという伝説上の聖女イエスはその布に面影を写して返したと伝える。また、イエスの顔を写した布。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ベロニカ」の意味・わかりやすい解説

ベロニカ
speedwell
Veronica

ゴマノハグサ科クワガタソウVeronica北半球温帯を中心に300種ほどを産し,一部は南半球の温帯(オーストラリア,ニュージーランドなど)にまで及び,形態的にも多様な群であるが,美しい青紫色の花を穂状につける種が,園芸界ではベロニカの名で広く栽植される。これはキリスト教伝説に語られる聖女ベロニカにちなんだ名である。ベロニカの手巾(しゆきん)にキリストの〈真の顔〉が写ったように,この花の色は〈真の青〉を写しとったものといわれる。日本にもヒロハトラノオやトウテイランのように美しい野生種があり栽植もされるが,庭園に多く植えられるヨーロッパ原産種に次のようなものがある。

 ベロニカ・ロンギフォリアV.longifolia L.はヨーロッパ中部からアジア北部にかけて分布する多年草。草丈60~80cm。葉は長披針形で,対生または3~4枚輪生する。7~9月に茎頂に長さ10~15cmの穂状花序に青藍色の小花を密生する。切花や花壇に使われ,耐寒力は強く,花色が白,桃色,濃青色で,大穂などの園芸品種が数種ある。セイヨウトラノオの名もある。

 ヒメルリトラノオV.alpina L.(英名Alpine speedwell)はロックガーデンや平鉢植えに適した小型の多年草。原産地はヨーロッパ,中央・北アジアの山岳地方。茎は地をはって茂り,5月には高さ15cmの花穂を立て,青紫色の小花を穂状につけて美しい。日本への渡来は昭和初年。山草として小鉢が往々市販される。繁殖株分け。用土は通気・排水のよい粗めのものがよい。
執筆者:


ベロニカ
Veronica

エルサレム出身の伝説的聖女。生没年不詳。12年にわたる長血の病(血漏)をイエス・キリストに治してもらったという(《マルコによる福音書》5:25~32など)。彼女の名前は外典の《ピラト行伝》(《ニコデモ福音書》)7章に出てくる。伝説によれば,イエスの肖像画を描いてもらいに画家を訪ねる途中イエスに出会い,画布を彼に渡し返してもらったところ,そこにイエスの顔が描かれていた。彼女はその画布で皇帝ティベリウスの重病を治した。また別の伝説によれば,ゴルゴタの丘への〈十字架の道行〉途上のイエスの血と汗を,みずからかぶっていた亜麻の手巾(しゆきん)でぬぐったところ,その布にイエスの顔が残ったという。〈ベロニカ〉という言葉は,この女性の名前と,布に写ったイエスの肖像の両方を意味しており,ラテン語の〈ウェラ・イコンvera icon〉(〈真の似姿〉の意)から派生したといわれる。美術作品では,キリストの顔のある布を広げていたり(メムリンク《ベロニカ》),イエスの顔をぬぐう場面などが描かれる。祝日は2月4日。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベロニカ」の意味・わかりやすい解説

ベロニカ
Veronica; brooklime; speedwell

ゴマノハグサ科ベロニカ (クワガタソウ) 属の総称。一年草または多年草で,北半球に約 300種が分布する。帰化植物として広く雑草化しているオオイヌノフグリや,野草のクワガタソウなども含まれる。葉は単葉で対生であるが,まれに互生する。花は単生あるいは総状花序を形成する。藤青色の穂状の総状花序をつけるルリトラノオ V.subsessilisやベロニカ・ロンギフォリア V.longifolia,ベロニカ・スピカータ V.spicataなどが切り花や花壇に利用される。交配種もあり,白色や桃色の品種もみられる。じょうぶで育てやすいものが多い。腐植質を多く含む土壌が適し,日当りのよい場所で育てる。

ベロニカ

ウェロニカ」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

DBM用語辞典 「ベロニカ」の解説

ベロニカ【veronica】

世界中のゴーファー・サーバ上での検索を支援するユーティリティ。ベロニカは、メニュー一覧を表示する代わりに、キーワード入力による検索でゴーファー・サイトの情報を探す。

出典 (株)ジェリコ・コンサルティングDBM用語辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のベロニカの言及

【十字架の道行】より

…外典書や受難劇による主題の潤色がしだいに行われるようになり,受難を悲しむ聖母マリアの姿が行列の後ろに加えられ(ジョット画,パドバ,アレーナ礼拝堂フレスコ画,14世紀初めなど),ついで表現の中心は,十字架の重圧にあえぎ,大勢の不信心者の手により傷つけられる〈苦しみのキリスト〉に移行する(ムルチャーHans Multscher画,ブルツァハ祭壇画,1437)。さらに〈ベロニカ〉などの新しいモティーフも加えられる。一方15世紀以降,この主題は,キリストの死刑判決から埋葬までの14の留(とま)りとして表現され,祈禱や瞑想の対象となった。…

【聖遺物】より

…ルイ9世は,キリストの荆冠を得てパリにサント・シャペルを献堂したし,受胎告知の日にマリアが着ていたという胴着はシャルトルのノートル・ダム(聖母)大聖堂に安置された。受難の日に聖女ベロニカがキリストの汗をぬぐい,ために顔形が写ったという聖顔布(スダリウムsudarium)は教皇代理アデマール・デュ・ピュイAdémar du Puyによって発見され,南フランスのカドゥアンにもたらされた。最初から墓所である場合や,トマス・アクイナスのように死後ただちに分骨された場合は別として,多くの聖遺物は後年奇跡とともに〈発見〉されている。…

【オオイヌノフグリ】より

…ヨーロッパ原産で,明治のころ帰化し,全国に普通に見られる雑草である。 上記の種類が属すクワガタソウ属Veronica(英名speedwell)は茎の主軸に花がつく群と,主軸は花期に生長を止め,葉のわきから花序を出す群とがある。前者にはイヌノフグリ類,ヒメクワガタ類,テングクワガタ類などがあり,後者にはクワガタソウ類,グンバイヅル類,ヒヨクソウ類,カワヂシャ類などがある。…

【オオイヌノフグリ】より

…ヨーロッパ原産で,明治のころ帰化し,全国に普通に見られる雑草である。 上記の種類が属すクワガタソウ属Veronica(英名speedwell)は茎の主軸に花がつく群と,主軸は花期に生長を止め,葉のわきから花序を出す群とがある。前者にはイヌノフグリ類,ヒメクワガタ類,テングクワガタ類などがあり,後者にはクワガタソウ類,グンバイヅル類,ヒヨクソウ類,カワヂシャ類などがある。…

※「ベロニカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android