ペイ・パー・ビュー(読み)ぺいぱーびゅー(英語表記)pay-per-view

翻訳|pay-per-view

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペイ・パー・ビュー」の意味・わかりやすい解説

ペイ・パー・ビュー
ぺいぱーびゅー
pay-per-view

有料テレビ課金方式の一つで、視聴するコンテンツ(番組)ごとに視聴料金を支払うもの。略称PPV。定額方式(月額料金制など)の場合には視聴しないコンテンツも含めて課金されるのに比べ、見たいコンテンツを割安で視聴することができる合理的な方式といえる。しかし、視聴するコンテンツが極端に多くなると、定額方式よりも高額になることもある。おもに衛星放送ケーブルテレビCATV)、ビデオ・オン・デマンドVOD)で使われる。CATVやVODの場合は通信路が双方向性なので、視聴するコンテンツの登録・購入手続は他の回線を使うことなくできるが、衛星放送の場合は通信路が一方向性なので、視聴するコンテンツの登録・契約は、電話回線やインターネット回線を併用して行う必要がある。

 PPV方式アメリカで始まった。CATVを利用したシステムが1972年に誕生し、その後1990年になって衛星放送を利用したシステムが使われるようになった。コンテンツは、スポーツ、映画、アニメーション、コンサートなど多岐にわたっているが、とくに総合格闘技(Mixed Martial Arts:MMA)、ボクシングプロレスなどの格闘技が占める割合が大きい。視聴料は1コンテンツ当り4~60ドル台と開きが大きく、人気のボクシングなどの場合、70ドル近い設定がなされることもある。

 日本のPPV方式は衛星放送から始まった。1996年(平成8)に東経128度CSデジタル放送の「パーフェクTV!」で採用されたのが最初で、現在は東経124度および128度CSデジタル放送の「スカパー!プレミアムサービス」(「パーフェクTV!」の後継)で採用されている(東経110度CSデジタル放送の「スカパー!」では使われていない)。アメリカの場合と異なり、CATVでのPPV方式採用は遅く、2004年(平成16)にジュピターテレコム(J:COM(ジェイコム))が採用したのが初めである。その後、2007年にアクトビラ(VOD形式のコンテンツを配信する企業)がPPV方式による動画コンテンツの配信サービスを開始している。PPV方式配信サービスを行っている事業体はほかにもあるが、日本では、視聴と購入に対する手続がめんどうなことや、格闘技に対する関心がアメリカほど大きくないこともあって、PPV方式の普及は進んでいない。

 PPVに類似した方式に、1日単位で課金が行われるペイ・パー・デイ(Pay Per Day:PPD)方式や、一連の番組単位で課金が行われるペイ・パー・シリーズ(Pay Per Series:PPS)方式などがある。

[吉川昭吉郎 2016年4月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android