ペーター・カーメンチント(読み)ぺーたーかーめんちんと(英語表記)Peter Camenzind

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ペーター・カーメンチント
ぺーたーかーめんちんと
Peter Camenzind

ドイツ作家ヘッセ長編小説。1904年刊。スイスアルプス湖畔の小村に自然を友として成長した主人公ペーターが、さまざまな体験を経てしだいに自我に目覚め、文学にも目を開くが、やがて勤務地の大都会への幻滅アッシジの聖フランチェスコに心ひかれての巡礼行、不幸な身体障害者への愛の献身などがあったのち、最後に、老父の病気のため故郷に帰り、村のために働く決意をする。ドイツ伝統の教養小説の一つ。この小説の大成功でヘッセは作家生活に入ったが、ここには作者の生涯の重要なモチーフがほとんどすべて含まれ、とくに、全編にみなぎる清新な叙情性で、持続的な人気がある。

[藤井啓行]

『高橋健二訳『郷愁』(新潮文庫)』『関泰祐訳『青春彷徨』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ペーター・カーメンチント
Peter Camenzind

ドイツの作家 H.ヘッセの小説。 1904年刊。スイスの高地生れのペーターは都会に出て友情,恋愛を知り,教養を積みながらも,都会生活の虚偽を知り,自分の仕事が自然の神秘,美しさを,文学を通して人々に伝えることにあると悟る。身障者ボッピーによって真の愛を教えられた彼は,ボッピーの死後故郷に帰り,そこが自分にふさわしい場所だと認める。抒情的な教養小説

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