ペーター(英語表記)Walter Horatio Pater

精選版 日本国語大辞典 「ペーター」の意味・読み・例文・類語

ペーター

(Walter Horatio Pater ウォルター=ホレーショ━) イギリス批評家小説家唯美主義立場に立って書いた「ルネサンス史研究」により、一九世紀末のデカダンス的文芸思潮先駆となった。(一八三九‐九四

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デジタル大辞泉 「ペーター」の意味・読み・例文・類語

ペーター(Walter Horatio Pater)

[1839~1894]英国の批評家・小説家。唯美主義の立場に立つ評論ルネサンス」などにより、近代印象批評の先駆者とされる。小説「エピキュリアン‐マリウス」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「ペーター」の意味・わかりやすい解説

ペーター
Walter Horatio Pater
生没年:1839-94

イギリスの批評家。1862年オックスフォード大学を卒業。65年同大学ブレーズノーズ・カレッジの個人指導教師となり,以後ほとんどここを離れることなく,死ぬまで思索と著作の独身生活を送った。批評家として最初に注目されたのは,1873年発表の《ルネサンス》で,これにより〈芸術のための芸術〉の擁護者,いわゆる〈印象主義批評〉の祖とみなされることとなった。O.ワイルドをはじめ,19世紀末の唯美主義文学者たちに強い感化を及ぼしたが,宗教や道徳を無視するとして非難を受けたこともある。批評論としてはほかに《批評論集》(1889),《プラトンとプラトニズム》(1893),遺稿を集めた《ギリシア研究》(1895)などがある。小説としては,マルクス・アウレリウス帝時代のローマ帝国を舞台に,マリウスという人物の精神の遍歴を描いた《エピクロス哲学の徒マリウス》(1885)が,作者自身の内面生活の発展を描いた教養小説として重要である。そのほかに短編小説集《架空の肖像》(1887),未完の長編小説《ガストン・ド・ラトゥール》(1896)などがある。ペーターは単に感覚的な美と快楽を求めたのではなく,精神的な美の追求を説いた。彼の散文は小説,批評論を問わず,身を削る苦心の結果生まれた完璧な文章表現であり,みずから主張する芸術美の結晶であった。日本にも大正時代以後大きな影響を及ぼした。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペーター」の意味・わかりやすい解説

ペーター
Pater, Walter Horatio

[生]1839.8.4. ロンドン
[没]1894.7.30. オックスフォード
イギリスの批評家,随筆家。オックスフォード大学に学び,特別研究員として生涯の大半を学窓で過した。学生時代ラスキンの『近代画家論』に親しみ,ラファエル前派の人々の審美主義運動に共鳴した。出世作でまた代表作の『ルネサンス』 Studies in the History of the Renaissance (1873) は,ルネサンスの芸術家を題材に,彼の唯美主義的思想を最も端的に表明したもの。ほかに小説『享楽主義者マリウス』 Marius the Epicurean (85) ,短編集『空想の肖像画』 Imaginary Portraits (87) ,自国の文学を扱った『鑑賞集』 Appreciations (89) ,『プラトンとプラトニズム』 Plato and Platonism (93) ,死後出版の『ギリシア研究』 Greek Studies (95) ,未完の小説『ガストン・ド・ラトゥール』 Gaston de Latour (96) 。その文体と思想双方において,ワイルドや G.ムアらの世紀末文学に,またイェーツを通じて 20世紀の作家にも大きな影響を与えた。

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百科事典マイペディア 「ペーター」の意味・わかりやすい解説

ペーター

英国の評論家,小説家。オックスフォード大学ブレーズノーズ・カレッジの個人指導教師を務めながら,《ルネサンス》(1873年),《批評論集》《プラトンとプラトニズム》などの評論,小説《享楽主義者マリウス》(1885年),短編集《架空の肖像》などを書く。言葉を厳選した文章で印象主義批評と芸術至上主義を展開した。
→関連項目本間久雄

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペーター」の意味・わかりやすい解説

ペーター
ぺーたー

ペイター

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世界大百科事典(旧版)内のペーターの言及

【親子】より

…彼らは父子間の血のつながりを知らないにもかかわらず,社会的な父親の存在を認めていることになる。このようなことのため,一般に,社会的な父親と自然的な父親が区別され,前者はペーターpater,後者はジェニターgenitorと呼ばれる。 今日の社会では,受胎から出生に至る自然のしくみを前提とするかぎり,自然的な親子関係と社会的な親子関係とは通常は一致する。…

【親族】より

…通常,〈系譜関係〉が親族の社会的関係に移行するには,それぞれの民族において特有の社会的承認が必要であり,人びとの社会的承認を経て合法的な地位―役割関係をもち,権利―義務関係をもった社会関係として親族関係が表現される。そこで〈ジェニター〉は社会的承認のある父親〈ペーターpater〉となり,〈ジェニトリックス〉は社会的承認のある母親〈メーターmater〉となるのである。しかし,男親に関しては,〈ジェニター〉必ずしも〈ペーター〉にあらずという例が多く,双方が同一人物とはならない例が世界各地に認められる。…

【オーカッサンとニコレット】より

…この作品を伝える写本はただ一つしかなく,パリ国立図書館蔵となっている。ウォルター・ペーターがその著《ルネサンス》(1873)の中でルネサンスの先駆的作品として,同じ13世紀フランスの作品《アミとアミル》と共にこの作品を取り上げて以来,広く一般の関心を集めたため,日本にも早くから紹介され(1894年《文学界》第16号に平田禿木が《オーカシンの君》の読後感を述べているのが最初),邦訳も数種出ている。【松原 秀一】。…

【文学理論】より

…当然ながら,文芸批評の側にもそれに並行する動きがみられた。イギリスのW.H.ペーターの印象主義批評などが,その典型的な例である。 そのような文芸批評の内部にひそんでいた問題を最も明確なかたちで提示したのは,おそらく,1910年代に新しい文芸批評の運動を起こしたロシア・フォルマリズムに属する人々であろう。…

【ルネサンス】より

…イギリスの批評家W.H.ペーターの批評論集。《文芸復興》とも訳されている。…

※「ペーター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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